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クリスマスムードの漂うそんなある日のこと、今日は天気が悪いだとか気圧が重いだとかで心なしか頭痛もする。


『な、なんで……今さらっ』


終業式が終わったその日、いつものように学校から家へのルートを辿っていれば、家の近くにいつかを思い出すような姿の母親がいた。

周りの目も気にならないぐらい頭では考えが纏まらなくなっていて、胸ぐらを掴み壁に押し付けた。



母親の遺伝で私はかなり背が高い方だった、だが気付かぬうちにもう同じ目線になっていた。

『どうして、あんなことしたの……』

とても落ち着いた声のトーンだった。

「言ったでしょ?邪魔したらアンタも売るわよ、って。」

『元はと言えばそっちが勝手にアタシの家に上がり込んできて、勝手に使ってるだけでしょ』

「だったら何なのよ、私はお前の親で、お前はまだ中学生、その意味分かって言ってる訳?」

『普通の親ならっ、自分の子供のことを見知らぬ男に売ったりなんかしない!!!』

「何よいきなり大きな声出しちゃって、いいじゃない別に。
アンタは私とそっくりなんだから。

どうせアンタも私と同じように夜の世界でしか働けないのよ?あの人との子じゃないし、でもこれでアンタもこっちの世界に仲間入りね!」


腹が立つほど私と似ている顔をしてた母は、さも嬉しいことのように言った。


ダン!!!

『アンタが、っ、アンタが死ねば良かったんだ!!!お父さんじゃなくて!!
なんでお父さんが死んで、アンタが生きてんだよ、なんで、何でッ!!!!!』

「なんでって言われても、お前の本当の父親がイカれてたの。これで終わり。それ以上に説明することなんて無いわ。」



何か、とても大事な、重要なことを一気に明かされた気がする。


「邪魔。」


ドンと肩を押されて、尻もちをつく形で後ろに倒れ込んだ。

「じゃ、アンタ意外と好評だったみたいだし、また客きたらあたしの代わりに相手してあげてね」

まるでスキップでもしそうな嬉しそうな母親のその姿は、やっぱり悪魔のようだった。


『わたしのおとうさんは、本当のお父さんじゃないの……?』


それだけが頭の中から離れなくて、ようやく言ってやったとでも言いたげな母親の顔とわたしの表情を見て口角が上がって行った時の顔はきっと一生忘れられそうもない。


『あ、雨…』


幸い先ほど私が胸ぐらを掴んでいた時には通行人はおらず誰にも見られてはいないけれど、そろそろ下校時刻とも被って人通りが増えてきたところで近くの公園に移動した。



風邪を引いてしまうだろうが帰ったら"客"が来るというのだ、迂闊に家にも帰れまい。

『サイアク』

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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時

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