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そして、何だか変な感じがした。
前にも感じたことのあるような浮遊感。
「はぁ、ッ……はァ、か、かわいいねぇ………!!」
腹の中の異物感。
『な、っ』
嫌な想像が頭をよぎった。もしかしたら、と。
『やめて、ください…!』
そういう想像は結構簡単に当たるものだ、薄暗くてぼんやりした光景からだんだん輪郭がハッキリしていった。
『い、やだッ!』
上手く暴れることも出来なくて、私に覆い被さる男の好きなようにされていることだけを感じていた。
そいつは、とにかく気持ちが悪かった。
恐らく母親の客なのだろうが、見た目には特に気を使っていないような感じで、ハァハァと息遣いが聞こえるだけで悪寒がした。
地獄のようなこんな時間、早く終わってくれと思いながらも、身体に与えられる刺激には応えてしまうのが不思議な仕組みだ。
それが目の前にいる人を喜ばせる材料になることを、私は既に知ってしまっていた。
『たすけて、だれか、ねえッ!!!』
『これもうやめてよっ、痛いの!気持ち悪いから!!』
『触んないで、もうやだ、やだよこんなの、だって、全部おかしい』
コイツの喜ぶことなんて何もしたくない、そんな私の気持ちを知っているのか否か、どうやらその男は"苦しんでいる様子"に興奮するタチなのだと自分から告げた。
そしたら今度は何も反応してやるものかと私は口を固く結んだ。
*
結局ソレが全て終わったのは、昨日と同じような朝4時のことだった。
男は満足したかのように服を着て家から出ていき、どこに居るのか母親が帰ってくることも無かった。
『何したっていうの、わたしが。』
触られた場所が気持ち悪くて、何度も何度も体を洗った。
ボディーソープをたくさん付けてスポンジでこすって、擦りすぎて皮膚が赤くなるのにも気が付かなかった。
あの時の気味の悪さを忘れられなくて、眠れない日が続いた。
隈ができて、授業もあまりちゃんと起きていられなくて、段々部活にも顔を出さなくなった。
時間ギリギリに学校へ行き、6時間目が終わったらすぐに帰る生活。
その間母親は家に寄り付かなかった。
だから最低限自分のご飯だけは作って、毎日風呂に入って5回ほど体をこすって、そして眠れもしないのに布団に潜る日々だった。
気が休まって眠気が襲ってきても、次に目覚めたらまたあの時のように……そう思ってしまうと中々目をつぶれなくて、寒さを感じながら何度も何度も戸締りの確認をした。
それから、1ヶ月が経って街はすっかりクリスマスムードだ。
そしてそんなある日、母親に再会した。
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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時