19 ページ20
*
『い、ッ…いけない、今何時っ!!』
ガバッと体を起こしたのだが、ウトウトしていた時とは違うような、何でだろうと思い周りを見渡す。
「随分ぐっすり寝てたじゃんね」
『三ツ谷くん、こんばんは?』
「なぁ、何時だと思ってんの?」
今の私は何故かベンチに横になっていて、隣には三ツ谷くんがいた。彼は特に何をするでもなくボーッとしていた。
『何時、ですか…?』
三ツ谷「送るワ、家どっち?」
『んー、ごめんまだ…帰れないかも。』
公園にある大きな時計を発見し、ようやく時間を確認した。
まだ帰れない。
だっていつもならまだこの時間は、母親の仕事の最中だから。
三ツ谷「帰れない?何で?」
『色々あるの、三ツ谷くんこそ帰った方がいいよ。』
三ツ谷「……そっか。
じゃあ帰れる時間になるまで家来な、大したもてなしはできないけどここにいるよりはマシなはずだ。」
『い、いいの?』
三ツ谷「うん。」
『じゃあ、お言葉に甘えて』
そんなこんなで、彼の後を着いてきて到着したのはウチと少し似たようなアパート。
促されるままに部屋に入ると、ふわりと気の抜けるような柔らかい香りがした。
『……』
三ツ谷「ちょ、何、だ……大丈夫?」
『ごめん、ごめんなさいっ、なんか止まらなくって……ッ』
三ツ谷「うーん…あ、ホットミルク飲める?」
『……』コクリ
久しぶりにこうして何も気にせず心が解されているようで、涙が溢れて止まらなかった。
どうしてだろうと思っても答えは見つからなくて、ただ私の背中をさする三ツ谷くんに身を任せた。
『ありがとう、落ち着いた』
三ツ谷「良かった。そしたら絆創膏とか直してもいい?
貼ってから大分経ったっしょ?」
『うん、そうかも。ありがとう』
三ツ谷「気にしないで、染みるよ。」
三ツ谷くんの言う通り消毒液は染みて痛いはずなのに、その痛みは不思議と心地よくも感じるものだ。
変な感じ、でも嫌な気持ちは無かった。
それがどうしてなのかも考えた、けど答えがわかることは無い。
三ツ谷「……もう、朝だな、帰んなくて大丈夫か?」
『あー、うん、帰るよ。こんな時間まで本当にありがとう。』
今から寄り道をしながら帰ればちょうどよい時間になるだろうか、そういうルートを選ぶしかないのだ。
『お邪魔しました、今度何かお礼させて。』
三ツ谷「んー、じゃあ、聖さんさえ良かったら今度うちで一緒に制作しよ。」
『むしろ私が嬉しいけど、それでいいの?』
うとうとして半分寝ている彼の姿が印象的だ。
やはり、凄く申し訳なくて足早に三ツ谷家を後にした。
198人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時