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『い、ッ…いけない、今何時っ!!』

ガバッと体を起こしたのだが、ウトウトしていた時とは違うような、何でだろうと思い周りを見渡す。

「随分ぐっすり寝てたじゃんね」

『三ツ谷くん、こんばんは?』

「なぁ、何時だと思ってんの?」

今の私は何故かベンチに横になっていて、隣には三ツ谷くんがいた。彼は特に何をするでもなくボーッとしていた。

『何時、ですか…?』

三ツ谷「送るワ、家どっち?」

『んー、ごめんまだ…帰れないかも。』


公園にある大きな時計を発見し、ようやく時間を確認した。




まだ帰れない。

だっていつもならまだこの時間は、母親の仕事の最中だから。


三ツ谷「帰れない?何で?」

『色々あるの、三ツ谷くんこそ帰った方がいいよ。』

三ツ谷「……そっか。
じゃあ帰れる時間になるまで家来な、大したもてなしはできないけどここにいるよりはマシなはずだ。」

『い、いいの?』

三ツ谷「うん。」

『じゃあ、お言葉に甘えて』


そんなこんなで、彼の後を着いてきて到着したのはウチと少し似たようなアパート。

促されるままに部屋に入ると、ふわりと気の抜けるような柔らかい香りがした。


『……』

三ツ谷「ちょ、何、だ……大丈夫?」

『ごめん、ごめんなさいっ、なんか止まらなくって……ッ』

三ツ谷「うーん…あ、ホットミルク飲める?」

『……』コクリ


久しぶりにこうして何も気にせず心が解されているようで、涙が溢れて止まらなかった。

どうしてだろうと思っても答えは見つからなくて、ただ私の背中をさする三ツ谷くんに身を任せた。


『ありがとう、落ち着いた』

三ツ谷「良かった。そしたら絆創膏とか直してもいい?
貼ってから大分経ったっしょ?」

『うん、そうかも。ありがとう』


三ツ谷「気にしないで、染みるよ。」


三ツ谷くんの言う通り消毒液は染みて痛いはずなのに、その痛みは不思議と心地よくも感じるものだ。

変な感じ、でも嫌な気持ちは無かった。




それがどうしてなのかも考えた、けど答えがわかることは無い。


三ツ谷「……もう、朝だな、帰んなくて大丈夫か?」

『あー、うん、帰るよ。こんな時間まで本当にありがとう。』


今から寄り道をしながら帰ればちょうどよい時間になるだろうか、そういうルートを選ぶしかないのだ。

『お邪魔しました、今度何かお礼させて。』

三ツ谷「んー、じゃあ、聖さんさえ良かったら今度うちで一緒に制作しよ。」

『むしろ私が嬉しいけど、それでいいの?』



うとうとして半分寝ている彼の姿が印象的だ。
やはり、凄く申し訳なくて足早に三ツ谷家を後にした。

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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時

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