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『た、大寿.....さん。』
ようやく静かになって、さて眠りにつこうなんて思った時に玄関の扉が開いた。
大寿「俺は、誰よりもお前を愛している。」
寝る支度は万端だったから部屋の中は真っ暗で、外から入ってくる逆光で彼の表情は何も見えなかった。
『えっ、あの...』
思わず近くにあったスイッチを押して電気を付ける。
大寿さんは、ひどく哀しそうな顔をしていた。
『血、すごいですね.....?』
震えそうな手を隠すようにして、雑巾を探した。
大寿「あぁ、全部返り血だ。」
『そういう問題じゃ...!』
大寿「A、」
『.....なん、ですか。』
怖い、怖いよ。
でもその琥珀色の瞳に吸い込まれそうになって、つい返事をしちゃう。
大寿「俺は、お前のことを一番に、誰よりも愛そう」
『だから、なんなんですかそれ.....』
大寿「お前が受け入れてくれるまで、何度でも言ってやる」
『.......』
大寿「それだけだ。」
本当にそれだけ言えば、大寿さんはマントのような服を翻して家から出ていった。
いくら緊張や恐怖があったからといって鍵をかけていなかったのは不用心にも程がある。
今度はしっかりと鍵をかけて、布団にくるまった。
たださっきと違って、なんだかほんの少しだけ心は満たされているような気分だった。
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「やめて、もうやめて下さいっ!!!!」
九井「ヤベェな.....イヌピーあそこまでできる?」
乾「俺は別に気にしねえよ?」
九井「.....確かに、そういう奴だったな。」
叫びながら助けを懇願する女をひたすら殴り続ける大男
それは黒龍のトップである柴大寿だった。
まるで普通ではない、女子供でも容赦はせずにただ依頼されたものの為や己のエゴの為に拳をふるう。
柴「もうAには近付くな、テメェもだ。」
本当だったら来たくなかった、なんて柄では無いことを考えている自分の気持ちが分からなくなってムシャクシャしていたのもあるだろう。
今日の柴大寿はいつもよりノっていた、と普段を知る者は口を揃えて言った。
外見を売りにしていたAの母親は化粧もボロボロに剥がれ、涙や鼻水、そして血液で液体まみれになっていた。
見ていても決して気分がいいものでは無かった。
柴「.....フン」
そしてその時に大寿が確かに感じたこの"昂り"は、一体何に向いていたのだろう。
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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時