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『いるっていうか、勝手に居座ってきて、困ってるんです.....』
大寿「それは、前にこの男が来た時より後からか?」
『.....』コクリ
こんなところで嘘なんてつかないし、ついたら何されるか分かったもんじゃないし。
ただ今は、ジリジリと距離を詰めてくる黒髪の人が怖かった。
シトラスミントのような香りがふわりとして、遠くの方から聞こえた女の声に背筋が凍った。
というか、母親の姿を見せた途端の彼の行動に、心臓を握りつぶされたような気がしたのだ。
「ったく、何なのウチの前に....ジャマなんだけど。」
大寿「お前がAの母親か?」
「は?何よ、アンタ誰?」
母親のことは嫌いだったけど、ずっと怖い顔をしている大寿さんに大きい態度で出られるのは尊敬だ。
大寿「コイツがな、お前に言うことがあるらしい。」
「おい.....おまえ、なんで勝手に姿眩ましてんだよ...話が違ぇだろ?」
『は、何ッ、やめて!!!』
「黙れ。」
「.....A?」
何で、何でこんなことになってて、どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだろう。
「いいか、マトモに答えないとお前の娘は殺す。」
『は、はァ!?』
「うるせぇ、死にてえのか。」
首元に添えられたヒヤリとした感覚は、折りたたみのできるサバイバルナイフ。
耳に息がかかるような距離なのに、変な意味でドキドキが止まらない。
もしかしたら、母親が助けてくれるんじゃ...なんて淡い期待も抱いた。
「.....そんな子知らないわ、確かにアタシが腹痛めて産んだけど子供だとは思ってないわよ。ここにいたのだって次が見つかるまでの間だし、あの顔なら金になるしね。それにアンタらあの黒龍でしょ?
どうせちゃんと答えてもタダでは返す気ないじゃない、なんの用?」
『.......。』
グッと、堪えた。
今さら何も悲しくないと思ったんだけど、ね。
でも、それでも必要とされていなかったことや、あの人と同じ娼婦になっていくのかと思うと怖くって。
大寿「九井、乾。ソイツはもう帰してやれ。」
「でも、ボス」
大寿「構わねえよ。」
それから何が起こっていたのかは分からない。
ただ、家のように前では聞きたくないような人を殴る音や人の叫び声。
何度も、誰に謝っているんだろうかと思った。
外から聞こえた話によると、私を尋ねてきた男性が借金を取り立てる為に黒龍という組織を雇ったらしい。
その黒龍のトップが大寿さん、そしてあの時にいた白い服を着ていたのはみんな同じ黒龍のメンバーだという。
私の家に母親がいたと目撃されたことであんな事になった。
ガチャ
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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時