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「あーA、ナプキン切れたから帰り買ってきて。」

『.....はい、』


何の恥じらいも躊躇いも無く缶の酒を流し込んではスケジュール帳を開いた母親、私の顔を見ることは無かった。

まるで自分の家かのように居座る母親、当然風呂にも入るし日用品だって私が用意したものを使っていた。


ここはもともと、大好きだった父の両親から援助をしてもらって借りている場所だ。何ひとつとして母親が我が物顔で住めるような要素はここには無いのだ。

「どした、元気無い?」

憂鬱な毎日が過ぎているような、そんな中にも太陽のように差す一縷の希望があった。


『三ツ谷くん.....いや、その。』

三ツ谷「別に言いたくねえんなら無理に聞かねえよ?」

『.....うん』

三ツ谷「っていうか、聖さんの作品見せてもらう約束じゃん。
俺のもホラ、持ってきたから」

ニコ、と優しい笑顔を見せてくれる三ツ谷くんは今ではとても良い切磋琢磨できる相手。というような関係になっている。

お互いが刺激になって、負けたくないなって気持ちや強くなった。
彼だけじゃないけど、他の人の作品を見れば私には無いような視点を見つけられる。



『.....え、これ手縫いなの!?』

三ツ谷「うん、そうだけど。
あ、でも服とかは流石にミシンだよ。デカいと持って帰れねーし」

『そっかぁ、すごい。丁寧な処理されてる。
これ着れる人は幸せだね!羨ましいぐらいだ!』

本当にそう思えてしまうぐらいに三ツ谷くんの生み出した服や小物(と言っても手袋とかマフラーとか)はセンスも良いし形や色使いが私の好きと合致していた。

三ツ谷「あー、その。良かったら着てみる?」

『.....いいの?』

三ツ谷「モチロン。
それに服だって着てくれた方が嬉しいじゃん?」

『そう、かな.....私もなんか、なんか.......あ!』


三ツ谷が前に作ったという大きめのワンピース、そして私が趣味の一環で作ったニット帽を交換してみることにした。


『これ、ファスナー後ろなんだね、もしかしたらちょっと着づらいかも。
位置とか使ってるファスナーは滑りやすくていいけど1人で着るのは大分、たいへん.....よいしょ』

三ツ谷「んー、マジか。そういうの助かるわ。
他には、なんかない?」

『うーん、なんだろう。
あぁ、えっと...ちょっと言いにくいんだけど、人によってはスカート丈おかしくなっちゃうかも。
マネキンと同じような体型ならいいけどバストサイズが大きめな人はグラビアみたいに見えるかも。』


なんて、真面目で楽しい話をたくさんすることが出来た。

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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時

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