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『こんな時間まで、本当にありがとう!』

柚葉「うん、また来てね。」

『はぁい、コンテストの結果出たらまた言うね』

柚葉「Aなら今回も良いとこいける、楽しみにしてるね!」


今日に限った話ではないけれど、柚葉ちゃんと一緒にいる時間はいつも過ぎるのが早く感じる。

それがどうしてなのか、私にはまだよく分からない。


けど、中学に入って初めて話をした友人で、学年が上がってもクラスが変わっても、この心地よい関係は変わらないのがとても嬉しかった。


鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気で家路を辿っていた。

そう、柴家から私の家までは本当に短い距離ではある。
普段遠回りするような理由も無ければ、こんな暗い時間に家に帰らないのが逆に危ないから、多少危険な道であろうと最短距離で帰っているのだ。



『な、どうして……』


今日もそうやって、最短距離で真っ直ぐ家に帰って、風呂に入って眠ろうと思っていた。

「ったくアンタ、こんなボロっちいとこに住んでんの?」

『何で、ここにいるの…』

「何でって、当たり前じゃない、アンタの親なんだから。」

今は中学生が出歩くには少し遅すぎる時間で、夜の街から抜け出してきたみたいな格好をした母親の姿が街頭に照らされていた。

私は目の前にいるこの人が嫌で家を出て行ったのに、目の前のその女は変わらず飄々としていて、どうしてか私の家の、それもアパートの部屋番号まで知っていた。


『い、嫌だ、帰って……』

「ムリよ、だってカレシだった人が姿くらましちゃったんだもん。
ちょっとでいいから泊めてよね。」


なんて、強引に家の中へ押し入り、手に提げていたビニール袋から酒を取り出し私の家の冷蔵庫へと入れていく。

『何、やって……やめてよ!!!!
ここは私の部屋なの!貴方はもう私とは関係ないじゃない!!!』

たまらず背中を押してみれば、彼女はバランスを崩した。

ただ、それでどうこうなるなんてことはなかった。




「アンタ、まだ中学生でしょ?
何舐めたこと言ってるのよ。
中学生なんてまだ義務教育なんだから、アタシから離れられる訳ないでしょ!?

バカじゃないの!!!」

『ッ!!?!』

手を頭上に振り上げた姿を見て、私はとっさに目をつぶった。

そしてスグに鈍い痛みが走る。


あぁ、久しぶりだ、この感覚は。



また、地獄のような毎日が始まるのかな。


「とにかく、適当にカレシ見つけたら出ていくから、それまでいさせてって言ってんのよ。」


面倒くさそうな顔だけど、その顔は私にそっくりで。

いつか自分もこうなっちゃうんじゃないかって思うと、怖くて眠ることすら出来なかった。

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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時

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