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『(今日はコンクールに出す作品をいよいよ完成させる日、絶対に集中するんだ…!)』


そんな気合いを入れたのがつい2時間半ほど前のこと、部活の時間だけじゃあやっぱり足りなくて、しょうがないから持ち帰って手縫いすることになった。

『洋服だからなぁ……手縫いだと粗目立っちゃうけど、ウチにはミシンもないししょうがないか。』

柚葉「ん?ならウチ来る?」

『へ?』

柚葉「ウチ、ママが使ってたミシンあるよ?」

『いやでも、悪いよそんな』

柚葉「アタシね、Aが部活してるとこ見るの好きなんだ。」

帰る時間がぶつかった柚葉ちゃんと並んで通学路を歩いていたら、そんな話になった。


『え、え……!』

柚葉「昨日も三ツ谷と話してるとこ見て思ったんだけどさ、Aが好きなとこをしてる時って輝いてるように見えるの。
アタシはそんなAを見るのが好き。」

『私も、柚葉ちゃんが笑顔でいたら嬉しいよ!
……そんな、感じかなぁ?』

柚葉「そうかも。
だから、もし力になれるなら私はAの力になりたい。

それに私の好きな姿のAをずっと見ていられるんでしょ?」

『なんか言い方恥ずかしいかも』

柚葉「あ、じゃあこうしよう!
ウチのミシンをAに貸すから、Aも私に何か作ってよ。
それがキーホルダーにせよ服にせよ、私はそれを大切にする。」

優しく眉を下げる彼女がの言葉は、きっと全て本当の気持ちで。断る理由もないし、そこまで言ってもらえるのは普通に嬉しいことだった。

ただひとつだけ、気掛かりなことはあった。


『じゃあ柚葉ちゃん、ずっとわたしのそばにいてね。』


柚葉ちゃんはいつ兄が帰ってくるか分からない、兄はほとんど家に帰ってくることはない、だなんて言っているけど、初めてお邪魔した時に彼は家に帰ってきて、今はこんな変なことになっているんだ。


『じゃあ、お借りします!!』

柚葉「飲み物とつまめそうなモンだけ持ってくる」

『気なんて遣わなくていいよ!』



いつものように集中してミシンに糸を通した。
ママの、と言っていたから柚葉ちゃんも使ってないみたいだ。糸も通っていなかったし、その近くにミシン用の糸はおろか、お裁縫道具のひとつも見つからなかった。


それから、柚葉ちゃんと軽口を言い合いながらミシンを操る手は止めずに作品を完成させた。

作品が完成した頃には外はもう真っ暗で、弟である八戒くんも帰宅したようだった。


今日は2人の兄は帰ってこないらしいと言うことと、2人からのご馳走させてという言葉に甘えて、晩御飯まで頂くことにした。

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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時

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