◆飴40個目 ページ41
馬狼はあたしの手から強引にピアスを奪うと、するりと耳に触れてきた。
少しくすぐったくて身を捩ると、「動くな」と注意される。
「……今付けてるやつ外すからな。」
「……ん」
耳にかかっていた髪を優しく退けられ、元々つけていた方を外すと、新しい方のピアスを指で摘んでゆっくりと穴に差し込む。
くすぐったいのと恥ずかしいのと、嬉しすぎるので頭がパンクしてしまいそうだ。
「……よし。出来たぞ」
「ありがと…」
スマホの内カメラを鏡代わりにして見てみると、あたしの両耳には飴の形をしたピアスがついていて、嬉しさで胸がいっぱいになる。
「わ、めっちゃ良いじゃん……馬狼どう?似合ってる…?」
「…………か、かわ……、……。」
「ん?」
「………。」
片手で額を抑えながら俯いている馬狼。どうかしたのだろうか。
「……おい」
「なに?」
「…………可愛い…んじゃねーの。」
「…………ぇ」
聞き間違いじゃない…よね……?
今、か、か、可愛いって……
「ッ……!何でもねぇよ!もう帰んぞ!!」
あたしが驚いて固まっていると、馬狼は逃げるように早足で歩き出した。
慌てて追いかけるけれど、あたしとの距離はどんどん離れていくばかりで。
何だか無性に寂しくなり、気づけばあたしの身体は勝手に走り出していた。
「ちょ、ちょっと待って……!!」
思い切って手を掴んでみると、振り払われる事は無かった。
「……必死だな。そんなに帰りたくねぇのかよ」
「うん……まだ一緒に居たい……」
素直にそう言うと、馬狼は小さくため息をつく。
「チッ……仕方ねぇ奴だな」
「………!」
…頭の上にあったかい何かが乗る感覚。
それが馬狼の手だと気づくまでそう時間はかからなかった。
「……めっちゃ熱い、馬狼の手…」
おっきな手に優しく、それでいてしっかりと撫でられて。
……そういえば体育祭の時もこうして頭撫でてくれたっけ…。ご褒美だ、なんて言ってさ。
あの時はあたしの気持ちに全く気付かなかった癖に、今はこうやって応えてくれる。それが本当に幸せすぎて。
「今日はこれで我慢しろ。親御さん心配すんだろ。」
…言うなら今しかない。
通話した時に彩華も背中を押してくれたし、馬狼もあたしの為にプレゼントまでしてくれた。
今度は、あたしが勇気を出す番だ。
「あのさ……馬狼」
「…何だよ」
馬狼はこちらに向き直ると、黙ってあたしの次の言葉を待った。
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39893 - 匿名希望さんのお話、他にも見てるんですが、全部いいお話ばかりです!いつもありがとうございます! (10月18日 22時) (レス) @page50 id: e8da3276d0 (このIDを非表示/違反報告)
羽鶴(プロフ) - 完結おめでとうございます。スウウウーーーーーッ……まっっじで最後まで最高でした!!!!!!ばち好みの作品で更新の度発狂していました…今までお疲れ様でしたこれからもがんばってください!!!!!!最高でした!! (7月20日 23時) (レス) @page50 id: fcd2bda98b (このIDを非表示/違反報告)
あげ豆腐(プロフ) - 完結おめでとうございます!!こんなにもいい神作品を見させてくださって本当にありがとうございます!次回作も楽しみに待ってます😊 (7月20日 23時) (レス) @page50 id: 417163fa8e (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望(プロフ) - ぱんぱーすくんさん» 完結しました!ありがとうございます!!😭🙏ツンデレキング、良いですよね…まず公式があざとい…🤝ほぼ自己満になっちゃってましたが、楽しんで頂けたなら良かったです……! (7月14日 9時) (レス) id: 733e983a69 (このIDを非表示/違反報告)
ぱんぱーすくん - 完結おめでとうございます!馬狼くんのツンデレほんっと可愛いです!!!馬狼くんの夢小説かいてるひと少ないの素敵な作品かいてくださってありがとうございました🙇🏻♀️💦 (7月13日 23時) (レス) @page50 id: 3f84d09ede (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月18日 1時