◆飴17個目 ページ18
3番目の走者がやる気のない走りで馬狼の元へと向かっていく。
あたしはその様子を眺めることしかできなかった。
「………遅せぇんだよ…」
次の瞬間、馬狼から殺気に近いオーラが溢れ出て、3番目の走者はビクッと肩を揺らす。途端にいつも通りの走りを取り戻した彼は、急ぐように馬狼にバトンを差し出した。
「チッ……どいつもこいつも勝手に諦めてんじゃねぇ！この俺がアンカーだぞ！」
そう叫ぶ馬狼の声を聞いて、胸の奥が熱くなる。
「ば……馬狼！！！」
皆が目を奪われるくらいの追い上げ。
馬狼はそのまま1位になり、ゴールテープを切った。
「…ハッ、当たり前だろ。ひれ伏せ下民ども！」
その表情はまるで、勝ったのは当然だと言わんばかりに自信満々な表情で。
「……あ"ーーーもー！！！カッコよすぎる！！！」
「うお！？A何いきなり！？」
隣に居た彩華に思いっ切り抱きついて泣いた。
「はー……あたしが無理して走ってなきゃ、迷惑かけずにすんだのに」
「……A……そんなことな…」
「おい飴女」
彩華の声を遮るように、馬狼があたしに話しかけてきた。
やっぱ怒ってるよね。絶対責められるやつ…
「……なに」
俯いたまま返事をする。しかし、次に聞こえた言葉はあたしの予想に反するものだった。
「保健室行くぞ」
「……え？」
「足、痛めてんだろ。隠しても無駄だ」
「……なんで」
「あ？んなもん見てればわかるだろ。」
そう言うと馬狼はあたしに背を向けてしゃがみこんだ。
「乗れ。おぶってやるから」
「は！？いやいいって……あたし重いし……」
「うるせぇ、早くしろ。」
「……分かったってば」
これ以上拒否すると本気でキレられそうだったので素直に従うことにした。
あたしは遠慮がちに彼の背中に体重をかけ、首に腕を回す。
「……重くない？」
「別に」
「そっか」
会話はそこで途切れた。けれど、好きな人におんぶされているという事実が嬉しくて、思わず頬が緩んでしまう。
「……おい飴女、お前ニヤけんのやめろ」
「え、ごめん……無意識」
「……キメェ」
「ちょっと、それ酷くない？」
グラウンドを出て校舎に入ると、廊下はシンと静まり返っていた。
昇降口で靴を脱いで、保健室までの道をまた馬狼に背負われながら歩く。
「……。」
「……。」
…この大きな背中に守られたら、どんなに幸せだろうか。
そんな事を考えながら、あたしは彼の温もりを感じていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
39893 - 匿名希望さんのお話、他にも見てるんですが、全部いいお話ばかりです！いつもありがとうございます！ (10月18日 22時) (
レス) @page50 id: e8da3276d0 (このIDを非表示/違反報告)
羽鶴(プロフ) - 完結おめでとうございます。ｽｳｳｳｰｰｰｰｰｯ……まっっじで最後まで最高でした！！!!!!ばち好みの作品で更新の度発狂していました…今までお疲れ様でしたこれからもがんばってください!!!!!!最高でした！！ (7月20日 23時) (レス) @page50 id: fcd2bda98b (このIDを非表示/違反報告)
あげ豆腐(プロフ) - 完結おめでとうございます！！こんなにもいい神作品を見させてくださって本当にありがとうございます！次回作も楽しみに待ってます😊 (7月20日 23時) (レス) @page50 id: 417163fa8e (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望(プロフ) - ぱんぱーすくんさん» 完結しました！ありがとうございます！！😭🙏ツンデレキング、良いですよね…まず公式があざとい…🤝ほぼ自己満になっちゃってましたが、楽しんで頂けたなら良かったです……！ (7月14日 9時) (レス) id: 733e983a69 (このIDを非表示/違反報告)
ぱんぱーすくん - 完結おめでとうございます！馬狼くんのツンデレほんっと可愛いです！！！馬狼くんの夢小説かいてるひと少ないの素敵な作品かいてくださってありがとうございました🙇🏻♀️💦 (7月13日 23時) (レス) @page50 id: 3f84d09ede (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：匿名希望 | 作成日時：2023年6月18日 1時
