傷だらけ二年生が友人に囲まれるまで (ページ4)

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トレイは「う」という呻き声のような声を抑えた
隣のケイトはそれに構わず「わあ」と目を輝かせる
視線の先ではリドルが隣に座る友人と同じ本を覗いて何か話していた
場所が屋外のベンチなため少し小声の会話だからか話の内容は分からない
だがその光景はトレイにとって心から嬉しいと言えるものだった
あれだけ暴君をしていたリドルが友人と
それも最近よく待ち合わせをしているらしい相手と仲良くしている
幼馴染でありもはや弟分とすら言っても良いリドルがそんな風に過ごしている
実家の弟妹が家に初めて友達を連れてきた時と同じ心境だった

「リドルくん、やっほ」
「ケイト、トレイ。帰りかい？」
「うんうん、リドルくんも誘って帰ろうかなって探してたんだ」
「ケイト、リドルは取り込み中だ。邪魔すると悪い」
「そうだね。この本を読み終わってからにするよ」

リドルが軽く持っていた本を上げて見せる
図書室から借りて来たらしいそれは子ども向けの童話集
あのオンボロ寮の可愛い後輩がこの世界に来てすぐに文化を知るため借りていた覚えがあった

「童話か、何かもう一度読みたい話でもあったのか？」
「いや、彼が童話を知らないようだったから教えていたんだ」

隣の友人を示されてトレイもケイトもそっちを見る
リドルの招待を受けてよくこちらの寮に来ている黒髪の二年生
先ほどからトレイとケイトをぼんやりした目で見ている

「クローバーさんとダイヤモンドさん？」
「そうだよ、いつもトレイのお茶菓子を食べているだろう？紅茶もフルーツの香りがするものはケイトのチョイスだ」
「そうなんだ。…あ、テル・メルゴートです、ポムフィオーレ寮の」
「ああ。トレイ・クローバーだ、よろしくな」
「ケイト・ダイヤモンド！よろしくね、テルくん」

包帯で半分覆われた顔を綻ばせて自己紹介するテルに二人も答える
トレイと同程度の身長はありそうだが仕草が何となく幼い
今もケイトの後ろを飛んでいく蝶を目で追い始めている

「ん、何見てるのー？」
「あれ、今とんでいった黄色のちょうちょです」
「わ、ほんとだ。大きい蝶だねえ」

子どもっぽい相手だと察したケイトが同じ方向を見てノリを合わせ始める
一方トレイはリドルの手元の本に目を戻す
内容は確か誰しも小さな頃に読み聞かせられたであろうものばかりだ
監督生が知らないのはともかくテルが知らないのはどういう事だろうか
首を傾げているトレイにリドルは

「説明は後でするよ」

とこっそり耳打ちした