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本日最後の授業後
リドルとテルは約束通り植物園に向かった
立ち入ることはそう多くない
前に来た時よりも花壇が少し増えている気がする
テルは見慣れているのかそれらに目を向けつつも奥を目指していた

「こっち、これだよ」
「これは…百合かい?」
「似てるよね、ぼくも思った」

そこにあったのは透明なカバーがかかった黄色いつぼみ
百合の花のつぼみに似たそれはカバーの中で淡く光っているように見えた

「これ、名前が無いけど魔法が宿った花なんだって」
「へえ。新種なのかい?」
「そうみたい。図鑑を持ってきて見比べたけど載ってないんだ」

楽しそうなテルは生き生きと説明する
植物が好きでここに来ることが多いテルが去年見つけたという
その時はまだ芽だったそれが何なのか気になりクルーウェルに聞きに行った
結果、名前が無く非常に珍しいもので入手まで困難であった事
成長が遅く咲くのに歳月を要する事
そして何よりこの花にはある噂がある事
それを知ってその噂を確かめるべく世話を買って出たらしい
クルーウェルが成長過程のレポートを書くことを条件に了承したという

「噂?」
「誰にも言っちゃ駄目って言われてるんだけど…リドルくん、秘密にしてくれる?」
「ああ、もちろん。約束するよ」
「そっか。…この花が咲いた後の蜜、飲んだらどんな怪我も治るんだって」
「回復…というより治癒の力があるのかい?」
「そう。だからこれも消えるかなって」

テルは笑いながら自分の顔の包帯に手を添える
普段は顔や体のそれには大した反応をしない
だが本当は過剰なほどに気にしていることをリドルは知っていた
自己評価が異常に低く、自分はポムフィオーレ寮に相応しくないと言った事もある
それが少しでも和らぐなら応援するのが友人だ

「僕も手伝うよ。もちろん噂については秘密でね」
「本当?心強いな、嬉しいよ」
「ああ、水やりと肥料…あと、レポートの手伝いくらいなら出来るよ」
「リドルくんが居るなら安心するよ、ありがとう」

心底嬉しそうな顔でテルは言う
咲きかけのつぼみを見つめて「治るかな」と呟いた
どこまでも無邪気なその横顔にリドルは思わず口を開く

「やっぱりその、キミの怪我…」
「…僕が悪いんだよ、良い子じゃないから」

その言葉だけで怪我の原因は透けて見えたようなものだった
だがようやくテル本人の口から誤魔化しでは無い言葉が聞けたのは驚きだった

「キミは良い子だよ」

言葉に詰まったリドルはどうにかその言葉だけを口にした

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共喰い@誰か・・・私に宿題の答えを・・・・(プロフ) - な、なんだこの神作品は・・・!更新頑張って下さい! (8月10日 19時) (レス) @page1 id: 6f0674a1a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とことこ | 作成日時:2023年7月14日 19時

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