54.負のアンサンブル[5] ページ5
そもそもどうして手伝ってくれるのか。
朔間が言う通り、優しいからと言ってしまえばそれで答えは終わりだが、この数日間の言動を見ていれば何か意図があるようにしか思えない。
借りを作れば、いずれ倍にして返せとでも言われるのではないかと、想像しただけでも背筋が凍りそうだ。
くだらない妄想を脳内でふんだんに繰り広げている内に、全ての工程を終え、出来上がった料理は皿へと丁寧に盛られた。
「…これは。」
先程とは打って変わり、皿に盛られているのはれっきとした料理である。
食べれるのか装飾品なのか困りどころの謎の葉っぱ、綺麗に形成された白玉、そして白玉を映えさすように滴らせた真紅のソース。
貧相な表現だが彩りが実に豊かで、たった数分前まで茶色い塊だったものが瞬時に見違えり、これこそ正に食を唆る料理そのものであった。
近くでみるまでは。
「うぎゃっ！何だこれ！？」
感心し近づき顔を覗かずと、何故か視点が交わる白玉には無駄に技術を駆使した瞳が描かれていた。
要は白玉ではなく眼球である。
改めて全体を見ると、真紅のソースは血にも見えてきて、完全にホラーとしか言いようがない。
あまりに不気味すぎる出来合いに、らしくもなく声を大きく上げてしまった。
「あの物体をここまで芸術的に仕上げれる俺って天才でしょ？」
確かにここまでリアルに再現出来るのは一種の天才なのかもしれない。
しかし、これはあくまで差し入れであり、芸術など一切不要である。
この不気味すぎる芸術じみた料理と、私の錬成した茶色い塊、どちらも差し出したところで彼らの固まる反応が目にも浮かんだ。
「ねぇ俺すっごく頑張ったんだから褒めてよ？」
「あ…ありがとう。」
出来れば芸術などどうでもいいから普通の料理を作って欲しかったのだが、こうなってしまったものは仕方がない。
褒めるに関しては何をすれば良いのかはわからないので置いておくとし、詰まりながらも礼を伝えた。
「じゃあお礼に何してもらおうかなぁ。」
「はいはい…。」
この数日何度か手助けされては見返りを求められているが、今一度明確の要求はない。
今回もどうせ出任せだろうと気を張ることもなく、次第に近づく朔間を冷めた瞳で眺め、適当に聞き流した。
「…え？」
ふわりと体を包まれる感覚、そして首筋にくすぐったく触れる漆黒の髪。
何が起きているのかもわからぬまま、意など無視して朔間に抱きしめられた。
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とーこ(プロフ) - あんな負のアンサンブル私だったら絶対に拒否しますね…。夢花さんのツボにジャストしたみたいで良かったです(笑)少しの間真面目な展開が続きますが、ちょいちょいおふざけを挟んでいきますのでよろしくお願いします！ (2018年8月22日 21時) (
レス) id: 519d18fdda (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 負のアンサンブルってそういうことだったのかwwwwww待ってwwwホッケーの発言が面白すぎてお腹痛いwww面白すぎwww最高www続き楽しみにしてまーす！！ (2018年8月22日 8時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とーこ | 作成日時：2018年8月17日 21時
