片思い。〜朔間凛月編〜[3] ページ7
提出した提出は幸いにも不備もなく、あっさりと許可が下りたので帰宅しようとすると、天祥院先輩に捕まってしまいまたもや時間を食った。
あれこれ思考を巡らせ、何とか会話を切り上げ外に出た時には、先程とは違い道路を照らす街灯がはっきりとわかるくらい暗くなっていた。
「まだいたのぉ?」
門の外にはこれから帰宅するのか今からバイクに乗ろうとする瀬名先輩と月永先輩、そして朔間凛月だ。
他の2人はそれぞれ用事があったらしく、先に帰宅したらしい。
「もう暗いしおれが家まで送り届けるぞ!どこにあるのか知らないけどな!」
「仮に無事家まで送り届けても、その後迷子になったら困るから。王さまはさっさと後ろに乗って。」
瀬名先輩は持っていたフルフェイスのヘルメットを乱雑に月永先輩の頭に被せた。
視界がどうこう言いながら、インスピレーションがぁと叫ぶその様子は混沌としている。
「そう言えばくまくん、Aと同じ方向じゃなかったっけ?送ってあげなよぉ?」
「げっ、何で俺に振るの?」
あからさまに怪訝そうな表情を浮かべ、瀬名先輩を睨み付ける。
私としても嫌悪感剥き出しのコイツと帰宅する忍耐レースなど無理。
「今日帰りに寄りたいところがあるから大丈夫ですよ。」
当然寄るところなどないので嘘なのだが、お互いの精神衛生上これが一番だろう。
気を遣って声をかけてくれる先輩には申し訳ないが、これ以上の打開策が見当たらなかった。
「その用事今日じゃないとダメなの?大人しく真っ直ぐ帰んなよ。今日のA結構かわいいんだしぃ。じゃあくまくん頼んだよ。」
こちらの意図に反して、瀬名先輩は月永先輩を後ろに乗せバイクを走らせた。
段々と遠のく姿を、取り残され重く気まずい雰囲気の中見つめる。
「はぁ…最悪。」
長く吐かれた溜息と同時に、朔間凛月はぽつりと呟く。
こっちから頼んだんじゃないんだけど、と言いたかったがここは敢えて言葉をのんだ。
「私こっちに用事あるからまたね。」
不愉快さを悟られぬよう、引きつりなからも笑顔を作り自宅とは逆方向へ歩き出した。
どうせ朔間凛月のことだから、こちらが切り出さなくてもさっさと一人で帰宅していただろうが。
「…帰るよ。」
腕に何かが捕まる感覚と、思いもよらぬ言葉が小さく聞こえる。
驚き振り返ると、そこには顔を逸らし腕を掴む朔間凛月の姿があった。
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作者名:とーこ | 作成日時:2018年7月14日 21時