十人十色。[あんスタ短編集] (ページ6)

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片思い。～朔間凛月編～[2] ページ6

相変わらず部屋の片隅で寝転んで会話に参加しない朔間凛月は無視し、現在上がってきている仕事の依頼を伝える。
有り難いことにスケジュールが合い、了承を得ることが出来たので生徒会室へ提出しようと戻ろうとしたのだが、時間を持て余したメンバーに捕まってしまった。

「Aちゃんに試したいヘアーアレンジがあったのよっ。髪いじってもいい？」

ピンクの可愛いポーチを取り出し、可愛くお願いされたら断る事も出来ない。
ましてやこの学院で唯一ガールズトークが出来る貴重な存在だ。
彼…いや彼女の意のままに茶味がかった髪の毛が本来のスタイルから形を変える。

「ふぅん、いいんじゃないのぉ。だったら俺もAにメイクしてあげる。ほら、じっとして。」

瀬名先輩は…断っても面倒くさいので言うことを聞いておくのが得策である。
仕事で訪れたはずなのにいつの間にかおもちゃの人形のようにいじり倒された。

「出来たわよ！見てみて王さまと司ちゃん！すっごく可愛いわぁ。」

ヘアーアレンジとメイクが同時に終わったらしく、瀬名先輩と嵐ちゃんは得意げな表情を浮かべる。
そこまでの快心の出来ならば私も見てみたいと思ったが、鏡を出す前に月永先輩と司くんが呼ばれたので、そっとポケットに忍ばせた。

「こっ…これは。もうWordにならない程の出来ですね！marvelousと言うかgoddessと言うか…。」
「これ、Aだよな？何で別人になってるんだ？待って！今考えるから答えを言わないで！」

メイクして髪型変えているからなんですけど。
その内作曲でも始めそうなテンションだったので、そっとペンと紙を机に置いた。
案の定、何かが彼に降りて来たらしく作曲を始めだしたので壁や床に落書きされるのは免れた。

「ねぇ…騒がしくて眠れないんだけど。」

みんなして騒ぎ上げていたのが喧しかったのか、むくりと上半身を起こし、寝ぼけ眼の朔間凛月が口を開く。
寝ていたせいで完全に存在を忘れていた。

「くまくんも見てみなよぉ。結構いい感じじゃない？」
「興味ない。寝る。」

全くこっちをみることもなく、足元に掛けられたタオルケットに包まると、再び眠りにつく。
私は私で感想など求めていなかったので、この塩対応にダメージを食らうことはなかった。

ほどほどに弄ばれ、解放されるまでにかなりの時間を費やしていた。
腕元の時計を見ると、下校時刻30分前だったので、早々に切り上げ生徒会室へ向かう。