片思い。〜南雲鉄虎編〜[2] ページ15
「おっ、A遅かったなぁ!」
「すいません。HRが長引いてしまって。」
気まずい雰囲気を引きずりながら、部屋に入ると待ってましたと言わんばかりの大きな声で声をかけられる。
遅くなった理由はもちろんHRだけではないのだが、正直に言える程度胸はない。
とにかく、今は目の前のレッスンに集中しなければならない。
まだ雑念でごった返した気持ちを切り替えて、いざレッスンと気合を入れたその時だった。
「A〜、きょうはなんだかげんきがないですね?」
なんてタイミングだ。
普段は全く他人に興味がなさそうな深海先輩に早速突っ込まれ、一瞬動揺しそうになってしまった。
自分では平然を装っているつもりなのだが、側から見るとそうには見えないのだろうか。
「そっ、そんなことないッスよ!Aさんはちょー元気ッス!」
完全にしらばっくれることを決意した途端、素直過ぎる南雲くんが大慌てで深海先輩の質問に答えてしまう。
何故君が答えるの!
「ん?どうした南雲。お前様子がおかしいぞ。」
「全然おかしくないッス!さぁレッスンを始めるッスよ!」
動揺しまくりなのがあからさま過ぎ、思わず肩を落とす。
自分だけなら何とかなったのだが、この子の嘘をつけない性格だけはカバーを出来る自信がない。
ここにいる人たちの口が軽いとは思わないが、以後のレッスンに支障をが出て来そうなので、出来る限りバレるのは避けたい。
「おっ、遅くなってしまい申し訳ないでござる!」
「遅れました…。」
ペコリと頭を下げる仙石くんと、気怠そうな高峯くんがバタバタと部屋に入ってきた。
動揺し過ぎて彼らがいないことに気付かなかったのだが、微妙な空気を壊してくれることに感謝でいっぱいだ。
「う〜む、よくわからんが全員揃ったから始めるか!」
腑に落ちないようだが、それでも時間が限られているためか、守沢先輩はやたら大きな声で声をかける。
正直助かった。
と思ったのも束の間だった。
「A、今日は1年生のダンスを見てやってくれ!」
この日ほど守沢先輩を恨んだことはない。
もちろん、先輩は全く悪くはないのだが。
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作者名:とーこ | 作成日時:2018年7月14日 21時