片思い。〜蓮巳敬人編〜[2] ページ11
キューティローズとは蓮巳先輩の愛読する漫画に出てくるヒロインの別称である。
因みにこの漫画は既に絶版になっているマイナーなものなので、知っている人の方が少ない。
「何やってるんだ…。」
あまりにも冷めた教室の雰囲気から逃げ出し、屋上へ連れ出された。
心底呆れ返った様子が伺えるが、こんなの想定内だ。
「だって…蓮巳先輩が言ったんですよ。私に似てるって。」
事の発端は休み前に書類を提出しに行った時のことだ。
私と先輩は時間が余った時、最近読んだ漫画の感想を言い合う程の仲になっていた。
お互い忙しくあまり漫画に費やす時間はないものの、好きなものについて語る時間はとても楽しみだったのだ。
『このヒロイン、Aに似ているな。』
既に世には出ていない古びた漫画を鞄から丁重に取り出し、表紙に描かれているあるキャラクターを指差した。
そこには金髪の目がくりんとした魔法少女のような可愛らしい女の子が、こちらを見て微笑んでいる。
それがキューティローズだ。
何の力を持たない主人公を、桁外れの魔力であらゆる敵から守り支える、チートな女の子。
ぶっちゃけ名前は結構ふざけているが、漫画自体は作中に張り巡らせた伏線とその回収が完璧で結構面白かった。
蓮巳先輩はどうやらこのキューティローズが今最もお気に入りのキャラらしい。
「だからって何で髪をそんな色にしたんだ。全くもって度し難い。」
キューティローズと似ていると言われ、鏡で自分と比較したがどう見ても似ない。
確かに雰囲気は似ているとは思うが、漫画みたいな大きな目でもなく、すらりと伸びた手足でもない。
チートな魔法など当然使えるはずもなく、出来ることと言えば機密情報に触れない雑務をこなす程度。
似せれるのは精々髪の色くらいしか思いつかなかったのだ。
「だって…少しでも似れば先輩振り向いてくれると思ったから…。」
「…。」
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作者名:とーこ | 作成日時:2018年7月14日 21時