43.海祇の亡き声 ページ45
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人が先か神が先か。
所謂、《卵が先か鶏が先か》それに準ずるパラドックスだ。
人は生命の誕生を説明できず、今のところ星屑のような偶然の連鎖の末《たまたま》人間が生まれたと証明ができない。
そして同時に、人間は《神》を否定することもできない。あらゆる神話により人は世界は神によって創られ、人は神を恐れ崇めてきた。
人は偶然の末生まれ、偶像の神を生み出したのか。
それとも、
神によって創られ、古代よりそれを崇めてきたのか。
どちらにしろ、現在。
《神》とよばれるその存在は、人に想われて存在をしている。
「神様が、呪いとなる」
「そう。
神様ってその性質上、人の思いに寄り添って来たから。
雷を恐れて、雷様を崇める。
飢餓に怯えて、豊穣の神を祀る。
敗北を恐怖して、戦神の賛歌を謡う。
そんな、人間の恐怖も怯えも恐れも全て飲み込んで神様は其処にいる。
人間に《
「人間は、昔から自然災害などを《神》の仕業とし擬人化して来たからですか?」
「イエス。
擬人化して具体化することで、想いの方向を一方行にして恐れ奉り、奉公する事で心の安寧どころとした」
「しかし、恐怖や恐れといった負の感情と伝承などの具体的なイメージとともに想われる神は時に強力な呪いとなって人間の前に現れてしまう」
それらは仮想特級呪霊と分類されるものもいる。
そう在れかしと望まれて生まれた化け物たち。
「結局、神も呪いも、その原型は人の感情。
行き場のなくなった《想い》の吹き溜り。
人に想われて生まれ落ち、恩讐するモノたち」
もう一度この海を見つめる。
輝く綺麗な海はきっと、この街の住人に愛されているのだろう。
綺麗に保たれ、この街に潤いをもたらす恵の海。
「なんでこんな話をしたかって言うとね。
この街には《綿津見信仰》があるんだって」
「わだつみ??
それって、海の神様のことですよね」
「よく知ってるね」
この海岸をもう少し歩くと小さな祠があるという。
海岸の岩部に掘られた洞窟に収まる、本当に小さな祠だ。
「じゃあ、この騒ぎの原因の呪霊はわだつみってことですか!?」
「んー。
さて、どうでしょーね」
ニヒルに笑って見せると七海くんが顔を顰めた。
少し考えるそぶりをしてポツリとこぼす。
「なぜ急に、被害が出始めたんでしょう。
信仰は遠い昔から続いていたのに」
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時