34.さよならだけが人生だ ページ36
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霜宮Aが消えた。
彼女は二年生でありながら既に1級の呪術師であり、凄腕の結界師だったと言う。
海外任務から帰還し五条悟と会った後、
高専に貼られている結界にも物理的な防犯カメラにも一切映ることなく消息を経つ。
呪力の痕跡もなく、周りからは神隠しと囁かれたほどだ。
しばらく捜査は続いたが、一週間が経って打ち切りに。
そして、彼女が消えてから一月がたった。
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知らない間に、年を跨いでいた。
季節は1月。もうすぐ、もっともっと寒い季節がやってくる。
久しぶりに踏んだ高専の敷地にホッと息を吐いた。
はいた息の白いモヤが、消えていく。
「もしもし、歌姫先輩?
無事東京の高専着きましたよ」
結界内に入って真っ先に電話をかけたのは、今は京都校に滞在している庵歌姫先輩だ。
彼女には一週間ほどお世話になり、帰ってきたら無事を真っ先に報告する約束になっていた。
「えぇ、はい。これから学長と先生に報告をしに。荷物は後日時間があるときに送ってください」
必要なことだけ話して電話を切る。
無駄話はよくない。
なににしても、
一年生たちに見つかったら面倒くさそうだ。
人気のない道を選んで通って、教員室へと向かう。
不格好に白い布で吊った左腕も、
松葉杖で補助しなければ歩くこともままならない右足もどこか痛みは現実味が薄くてぼんやりとする。
木々の葉が落ち、閑散とした高専はどこか寂しさに溢れていると思った。
「A、ご苦労だった」
ずるずると足を引きずってやっとたどり着いた教員室で、夜蛾先生に労われた。
私はそれに苦笑を返すしかない。
高そうなソファに深く腰を下ろしてお茶を飲みながら報告をあげていると、しばらくして外が煩くなった。
「マジだって!!ぜってーアイツの残穢だから!!」
「えーー、わたしには見えないんだけど」
「うるせぇ。俺がアイツの呪力を間違えるわけがねぇだろ」
壁一枚挟んでかろうじて聞こえてきた声に、頬が引きつる。
目の前の人もため息を漏らした。
「しつれーしまーす、よっ!!」
蹴破る勢いで教員室に乗り込んできたのは、
予想通りの一年生3人だった。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時