17.こわいもの ページ19
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いよいよ大っ嫌いな冬が来る。
冷えてきた空気に暖をとるように手をすり合わせた。
寮の自分の部屋に入ると、当たり前のように悟が居座っている。
もう文句を言うのも飽きてしまった。
朝学校に行く前に読んでいた新聞は、机の上に畳んでおいたはずのにいまは悟の手の中にあった。
意外だ。
彼が新聞を読むとは思っても見なかった。
「悟何してるの?」
手元をよく見てみると悟が見ていたのは、文字列ではなく私が赤ペンで丸をつけた天気予報のところだった。
「A、この印何?」
「んー、趣味?いや癖かな。
実家のほうの天気がね、気になってついつい印つけちゃうんだよね」
「なにそれ。ていうかAの実家どこ?」
「九州の方」
「遠っ!!」
「まぁね。だから余計に向こうの天気が気になるんだ。あっちはこっち見たく穏やかじゃないからね」
悟の手から新聞をさらって綺麗に畳んでからラックにしまう。
悟の横に座ると、ここぞとばかりにくっついてきた。どけと言ってもどかない。
寒いからいいじゃないかと温かい手にとられて、冷えていた私の手がじんわりと熱をもつ。
他人の体温の心地よさに脱力して悟をひっぺがすのは諦めた。
「九州って言ったら京都校のほうが近いじゃん。なんでそっちいかなかったのさ」
「京都って歴史柄、本家筋の人が多いじゃん。あんな権力争いに塗れたところに行きたくなかったの」
私なんて対して名も知られてない、結界師の一族だからね。
Aらしいと悟は笑った。
「で、?Aは俺を放置してどこ行ってたんだよ。今日は借りてきた映画一気見する約束だろ」
「実家に電話してただけだし、
そしてそんな約束たてた覚えはない。
借りてきたDVDだって、私が3本にしようって言ったのに、悟がかってに6本選んだんじゃん」
「夜更かし大好きなAちゃんなら、徹夜ぐらい余裕でしょ?」
「私は夜更かしが好きなだけで、睡眠ちゃんととる派だから!!」
ギャーギャーと騒いでいると、部屋のドアがノックされ傑が顔を覗かせる。
私と五條の惨状に「え、もしかして悟、A先輩に話通してなかったの?」と言葉をこぼした。
きてしまったものはしょうがない。
悟はともかくお菓子まで持参してくれた可愛い後輩を手ぶらで追い返すなんてできなかった。
大きなため息がこぼれた。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時