47. 疆域に陥ちる ページ49
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もしかしたら、もしかしたら。
私は今日この時のために生まれてきたのかもしれない。
ずっと不思議に思っていた。
《偶然の恩恵》なんてあり得ない。
この力には由縁があるのだと。
たぶん、
きっと、
おそらく。
私は今日この日のために生まれてきた。
わたしは、今日。
五条悟を救うためだけに生まれてきたんだと、確信してしまった。
―――――――
―――――
――
暗い。
昏い。
黯い、
溟い、闇い、、くらい。
目蓋をを閉じても、目蓋を開いてもそこは黒かった。
おまけに上も下も、右も左もない。
地面がなければ重力がなく自分が今立っているのかさえ怪しい。
暖かくもなければ、寒くもない。
ただ薄味の悪い……、頭がどうかしてしまいそうな空間だった。
時間が経てば、ついには自分が目を閉じているのが開いているのかさえ分からなくなる。
近くにあると感じるほど聞こえていた傑の声も、もう聞こえなくなってしまった。
もういつからここにいるのかさえわからない。
何時間…、いや、何日経ったのか。
最初は呪霊の生得領域かと思ったが、呪力の残穢すら感じないこの空間が、呪力によって作られたものではないとは明白だ。
このまま、死ぬのだろうか。
そんな考えさえ、
もう何度思考したかもわからない。
全てがあやふやで、
朧げで、泡沫のような空間。
「あー、いたいた。
こんなに深いところにいたなんて。
どうせ、調子乗って【虚式】をぶっ放そうとしたんでしょ」
ついに、幻聴を聞いてしまった。
この世界に何かを認識できる術はない。
それに、あの霜宮Aという人間が秘術である【虚式】を知るはずもない。
ならば、これは自分が見せる都合が良すぎる夢のようなもの。
「キミは中途半端に成功して、
世界に亀裂をつけたんだよ。
【虚式】は現には存在できないものなのに、無理やり割り込ませようとするから、穴が空いて自分もそこに落っこちたんだ。
仮想物質を現実世界に反映させるには緻密な術式操作が必要だからまだ悟には早いよ」
「しかも、キミは本来、
境界を渡る術なんて持たないはずなんだから」
一度この空間に落っこちて助かるなんて、奇跡なんだよ??
ま、その一度の奇跡のために私は生まれたんだろうけど。
朧げに声が聞こえる。
きっと、全てが全て、夢の出来事だ。
―
続編がんばるぞー!
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時