【忘却の誓.弐】 ページ48
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中原中也は格好良い。
それはものを投げたら下に落ちるように、息を止めたら苦しくなるように、人は死に向かうように、余りにも当然のこと。
中原中也は土佐Aにとっての正義なのだから。
“あぁ、そろそろ戻らないと”
梳いていた髪が、手からこぼれ落ちた。
それに寂しさを覚えて、視線をさ迷わせる。
「………なァ、A」
『何ですか?中原さん』
やけに真剣な面持ちをした中原さんに、どきっとする。
間近で中原さんを見つめて、場違いながら改めてカッコイイなぁと再確認した。
「忘れるな」
『何をです?』
「手前の騎士は俺だ。
昔の手前なんざ知ったこっちゃねェが、今、手前が背を預けて闘ってンのは俺だろ。
_________________土佐 Aはポートマフィアの幹部で、俺の相棒だ」
『_________ッ』
息を呑んだ。
簡単な言葉のはずなのに、理解するのに時間がかかって慌てて下を向く。
あぁ、ヤバイ。多分、今私真っ赤だ。
『ら、らしくないですよ。中原さん!』
「俺もそう思う。が、手前のそう云う顔が見れんならまたには良いかもな」
『うぅっ……』
にやにや笑う中原さんに頭を撫でられた。
あぁ、くそぅ。
笑う中原さん可愛いな……、じゃなくてなんてこと言って呉れるんだ!
『狡いなぁ』
「はっ、ほざけっ」
鼻で笑う中原さんに苦笑する。
「俺の背中も預けるんだ。
臆するなよ?」
『ふふ。
心地好くて、もたれかかってしまいそうです』
「そんなモン、重荷にはなんねェよ」
『そうでした。
中原さんは重さとは無縁ですからね。
_________そうだ。折角ですしアレしますか?』
「ん………?」
『少し、動かないでくださいね』
裾を払って、その場で片膝を付いた。
右手を胸にスっと左手を出し中原さんの左手をとる。
それは妙に様になっていて、中世の騎士を思いおこさせる。
そっと、手の甲に口付けを落とす。
突然の奇行に目を見開く中原さんを見上げた。
『
汝の運命は我が剣に。
汝が死に向かう其時まで、我が運命は汝の剣に。
宜しくお願いします。私の騎士さん』
まだ赤い顔でふわりと微笑んだ。
それは一つの儀式であり、呪いであり。
____只のママゴト。
「_________、それ立場逆だろ」
中原さんは“男として立つ瀬がねェ”と、カラカラ笑った。
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【忘却の誓.弐】
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暁郗 - イヴアールって何ですか?馬鹿ですみません…… (2021年1月17日 15時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - シャロンさん» うおぅ。変換ミスすみません。ありがとうございます (2016年9月16日 20時) (レス) id: 27d4bf92b8 (このIDを非表示/違反報告)
シャロン(プロフ) - 重厚ではなく銃口ではないですか? (2016年9月16日 20時) (レス) id: c0512120b1 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 朱鷺さん» 日頃から自由人の彼にはいい罰ですねww (2016年8月30日 18時) (レス) id: 071c21dacc (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - ひよこリュナさん» 本編でセリフゼロは可愛そうかなと思いましてwwwオマケで枠外扱いですw (2016年8月28日 20時) (レス) id: 4dc04444c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2016年7月22日 19時