【文スト】百鬼ノ図と隣人【弐】

【過去に引導を．壱】 ページ36

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私はふわりと笑う。





『扨、太宰さん。
之は__________何でしょうか？』






摘むように持った封書を、ヒラヒラと見せ付けた。


きっと、私は今あくどい顔をしているだろう。
ニヤけていないか、鏡を見たいぐらいだ。





「………何で君がそれを持ってるのかな？」




『質問したのはこちらですが………、まぁいいです。

見覚えが無い訳がないんですから。
之は貴方が先日送った物の筈ですからね』






封書を開けると、一枚の紙を取り出す。






『……太宰さんは予言がお得意のようですから更に云いますが、私も一つ予言しましょう。


“明日。五大幹部会は開かれない” 』





「_________ッ！」





断言した私に、太宰さんが目を見開く。
頭のいい彼なら私が何をしたのかぐらいすぐに分かるだろう。






「君は真逆________」




『【太宰 死歿せしむる時、汝らの凡る秘匿公にならん】


確かに脅しとしては最高に巫山戯た文です。
でも、この脅しは嚇したり得無い』




「………………。」





『聡明な太宰さんなら良くわかるでしょう？

一つ。
脅しは真実性が無いと成立しません。
まぁ、脅されている場でそれが本当かなんて普通は判断は付きませんけどね。


そして、二つ目。
脅しは、脅された者が背いた時に起こるデメリットと脅威が理解していなければ成立しないもの何ですよ』




「そりゃそうだね。
「動けばコイツを撃つぞ」そう云っても、脅された者が人質に無関心なら脅しには成り得ない」




『えぇ。
それを踏まえて、聞きましょう。
何故この手紙がここにあると思いますか？』





手紙を見せびらかすように、指先で弾いた。
こんな簡単な答え合わせ、
何故やろうとするかなどただの自己満足だ。


ただ、中原さんの報復の意が少しだけ。





『たとえどんな些細な情報であろうと、首領である林太郎さんの耳に入る前には私に伝えられます。

………それは書類も等しく。
勿論送られた封書も。


信憑性、真実性、重要性、それらを踏まえて首領に伝えるのですが』






「…………君はその手紙を首領に届けていないんだね。
成程。
それだと之は脅しとは成り得ない。



けど、今のAちゃんは__________」







『えぇ。
過去、【坂口安吾】が担っていた其。



貴方には苦い記憶でしょう。
元、幹部さん』







様々な感情が入り交じり、マーブル模様になっては自嘲の笑みを浮かべ____________。

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