【文スト】百鬼ノ図と隣人【壱】

【相剋の私たち】 ページ44

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『はー。おいしぃ〜』




大きな口を開けてオムライスにかぶりつく。


チキンライスにフワフワの卵。
ソースはケチャップが一番だ。

もう何回か作ってもらっているから、この料理は好みが聴かれなくなった。




……………作らせてばっかりで、女子として面目無い。




「聞いてもいいか？」



『？、何をです？？』




中原さんは既に食べ終わって、私が食べるところを眺めている。

今更改まって、何を聞きたいのだろう？




「勧誘、なんで断ったんだ？」




ああ、その事か。



何故って云えば。


出来ないから、が一番だだしい答えだろう。

表の住人の私はお義父さんに云われて会社に務めている。
データベースの中枢に潜る私は、決して下っ端のような切捨てられる社員ではないのだ。




けれど、





『_________私は、』






純粋に、マフィアになりたく無かった。



林太郎さんに話したのは、建前なのだろう。






『中原さんが思う程、善人ではありません』





人を殺して、恨まれて、負の連鎖から抜け出せない。
人の憎悪など五万と見てきた。



そんな事、情報の波に飲まれれば嫌でも直視する。





『…………、嫌だったんです。


もう１度闇に浸るのは………。
今も決して人様に云えるような仕事をしていませんが、それでも画面越しなんですよ。』





私は中原さんが思う程、強くはない。


薄情な人間だけど、友人が死んだら悲しむし心を痛める。

感情に任せて行動するし、正しいことにも目が眩む。




『私は2度と、そちら側には戻る気はありません。


けど、マフィアのような存在を否定するつもりもありません。
切っても切れない相剋の関係です』





「………………。」





『_______、でも一番のきっかけは中原さんですよ？

“お前には、日の下が似合う”そう云ってくれたでしょう？？



私はその言葉が嬉しかったんです。


だから、私は太陽の下を歩きます』





私の心に刺さった、その言葉。

私の周りの大人は闇人形としての私を望んだけれど。
中原さんは、日の下の私を似合うと云う。




そう思うと、嬉しくて嬉しくて。





『つまりは、今の生活が大好きなんですよ。中原さん』




ふわりと笑う。
いまが、幸せなのだ。
幸せで、仕合せなのだ。




中原さんが、優しく笑った。



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