【文スト】百鬼ノ図と隣人【壱】

【悪い大人の会話】 ページ19

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『少し、アメリカへ行ってきます』



そう云って、隣に住む小娘が渡米したのはつい三日前だ。



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「…………。」



ハァ、と思いため息をついた。

豪厚な赤の絨毯を歩きながら、書類に目をやる。
もう1度目を通すが、情報が変わるはずもなく悩みの種として中原の思考に残る。





(デュマ、と聞いて真逆と思ったが………、その真逆とはなぁ)



手元の資料は、とある少女についてのモノだった。
それも己の隣人の。

今は不在でそれだけで調子が狂うのに、ボスからの調査依頼で之だけの結果が出るとは。





「随分、辛気臭い顔をしてるのぅ」


「姐御かァ」



すれ違ったのは、同僚で同じ幹部の尾崎紅葉。
相変わらずのマフィアらしくもない煌びやかな着物姿。



「ここにいるという事は首領には報告したのかえ？」


「まァーな」


「その土佐Aという子も難儀な子だえぇ。
こんな悪い男に捕まるなんて」


「んだと？」



眉間に青筋を立てた中原が、紅葉を睨む。
それに怯まず紅葉は妖美に笑った。



「【トロイメライ･カンパニー】そして、
【アレクサンドル・デュマ･ぺール】。

どっちもわっちらの間ては余りに有名じゃけ」



その言葉に、中原は黙る。
それは真実だから、だ。


どちらもマフィアのような闇に住む住人には有名だ。





「アレクサンドル・デュマ。デュマ公が携わるトロイメライ･カンパニー。

派遣会社を名乗っているが…………。



名の由来。トロイメライ、「夢想(に耽ふけること)、 空想(すること)」といった意味があるが、本質は違う。


トロイメライは、【トロイアの木馬】を掛けた意味名。



神話トロイア戦争の名の通り、相手の内部に入り込み、派遣の革をかぶり情報を盗む________





世界最高峰の、私営の諜報機関だ。｣





真逆あの小娘が、そこの構成員だったとは。
もしかしたら自分が考えている以上に、彼女はナニカを持っているのかもしれない。



デュマ公の娘というのだから、IT関連のエキスパートなのか。




「で？首領はなんと？」



「近い内に、会いたいそうだ………。」



___________チッ
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