No.09 個性あり ページ9
＊
「い、いずくくんはこんなわたしになかよくしてくれた、やさしいひとだよ……」
そう言うとAは、紅い宝石のような瞳から大粒の涙を流した。
Aは切なかった。自分の友達が自分の友達を傷付けていると思うと、それはもう身を切られるより辛かった。
「それに、いずくくんはムコセーじゃないんだよ！」
「!?」
「“こせー”ってそのひとにしかないとくちょうっていういみもあるから、だれよりもやさしいいずくくんは、やさしいっていうこせーをもってるんだよ」
そんな屁理屈、出久を慰め勝己を宥められるだけの強さをもたないとAは思ったが、それでも、伝えたかった。
出久はださくないよ。出久は誰よりも優しいという
Aが流した涙は、ぽろぽろと白い雪のような肌を伝って地面に落ちる。止めようと頬に伝う涙を拭うが、涙は止まらなかった。
「な、なにいってるかわからねーよ！ ヘンなヤツ」
「ぁ、かつきく……」
Aの願いは虚しく、勝己は理解できないといった表情でその場から走り去った。
* * *
人生で初めて他人に声を上げ、恥も躊躇わずに涙を流してまで出久をかばったAの気持ちは、勝己に届かなかった。結局、自分は何もできなかった。
それがとてつもなく悲しくて辛い。
そしてまた、涙を流した。
「ご、ごめんね、いずくくん。わたし、なにもできなくて……」
Aは泣きながら出久に謝った。
「ううん、いいの。もういいんだよ！ それにぼく、かっちゃんにどんなこといわれてもヒーローはあきらめないから！」
「ほ、ほんとうに？」
「うん！ やさしいっていうこせーで、いろんなひとをたすけるんだ!!」
「！」
Aの気持ちは、勝己には届かなくとも出久には届いたのだ。
「ねぇ、ぼくといっしょにヒーローになろうよ！」
「っ！ ……う、うん！」
「やさしいっていうこせーと、ウサギさんのとってもつよいこせーがあわされば、ぼくたちはサイキョーだね！」
「うん!!」
そして、結局Aまで慰められた。
やはり出久は誰よりも優しいという個性がある、そう思ったAであった。
将来の夢を共に誓った出久とAの二人は、手を取り合って遊び始めた。出久にはもう惨憺たる表情はなく、Aの涙は止まった。
* * *
「なんで！ なんで、デクなんだよ!!」
遠くで誰かが言った。
＊
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サブとバラ(プロフ) - １ちゃん様、うなﾁｬ様、麗紅花様。レスを長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。コメントしてくださり、本当にありがとうございます！そろそろ更新を再開する予定でございます。そのときには、また応援していただければ幸いです。 (2021年3月24日 22時) (
レス) id: 4ca3bc2d2a (このIDを非表示/違反報告)
麗紅花(プロフ) - はじめまして。あなたが書いた小説を読んで最高でした。何よりも可愛らしくて、微笑ましくて、同時にちょっぴり切なくて良かったと思いました!続き、楽しみに待っています。 (2020年7月31日 21時) (レス) id: b338802f9d (このIDを非表示/違反報告)
うなﾁｬ - 面白かったです。楽しみに待ってます() (2020年6月21日 21時) (レス) id: 6b728aedaa (このIDを非表示/違反報告)
１ちゃん - とっても面白かったです!更新よろしくお願いします! (2020年5月24日 12時) (レス) id: 43879a9f7a (このIDを非表示/違反報告)
リヴ - いえいえ！！私も早まったコメントをしてしまい、申し訳ございません！！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: 9de3fc0d23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サブとバラ | 作成日時：2020年4月23日 23時
