Track79 ページ37
退紅の屋敷を出て、Aが門を潜ろうとすると
「よぉ、姉貴」
正面から左馬刻が歩いて来た
「左馬刻君」
「親父に呼び出されたのか?」
「いや…今日は自分から来た」
「…親父機嫌悪かっただろ」
「そんな事は無かった
どうやら、手土産のワインが気に入ったようでね」
「ワイン?」
左馬刻はAに聞き返した
「興味あるのか?」
「いや…まぁ
あの親父が機嫌良くなる位のワインって…」
「気になるなら、一緒に飲むといいよ」
Aは左馬刻にそう言った
「あぁー…じゃあ、そうするわ」
「左馬刻君は仕事の帰りかい?」
「おう……あぁ、そうだ」
左馬刻が思い出した様に言った
「?」
「理鶯の奴が今日飯食いに来いってよ」
「あぁ…それは、楽しみだな」
左馬刻の言葉にAはそう言った
「…………」
「何だ、その顔は?」
「いや…別に」
「そう」
「姉貴、理鶯の飯の
「随分と含みのある言い方だな」
「まぁ、楽しみにしてろや」
「…深くは聞かないことにするよ」
「おう」
左馬刻はそう言うと、屋敷の中に入って行った
Aは車に乗り、エンジンを掛けた
そこで、マニキュアが取れかかってることに気付いた
「(確か此処に…)」
グローブボックスを開けると、青のマニキュアが入っていたが、中身は空だった
「(……買い物するか)」
「(真逆、何時も使ってるやつが売り切れとはね……
態々、シブヤまで来る羽目になった)」
駐車場に車を止めると、Aは店に入った
店内を見ながら、目当てのマニキュアを探す
「あった…」
Aは青のマニキュアを手に取った
すると、Aの携帯電話が着信を告げた
「はい」
『昨日、事務所まで俺を運んだのはお前か?』
電話を掛けてきたのは飴村だった
「あぁ だが生憎、君の事務所の場所しか知らなくてね」
『バーの金もお前が?』
「起こすのは心許無くてね」
『……払う』
「え?」
『愚痴にまで付き合わせたんだ 酒代位払わせろ』
「別にいいのに」
『お前に借り作ったみたいで嫌なんだよ』
「そ、そうか…」
『それで、今どこに居るんだ?』
「…シブヤ」
『は? 何で?』
「買い物だよ」
『何処?』
「…来るつもりか?」
『いいから教えろ』
「…シブヤ駅」
『そこ動くなよ』
そこで通話は切られた
「(へぇ…律儀なんだ……)」
Aは携帯電話を仕舞うと、レジに向かった
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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2020年3月28日 16時