[文スト]中島敦には、可愛い双子の妹が居ます:2[中島敦]

60:お兄さんを誘拐した人を、私は許しません ページ24

「あ"ー……」

乱歩が怠そうにそう言った。

「市内の監視映像を洗え！六時間内凡てだ！」

「んあー……」

忙しく動き回る社員を余所に、新聞を広げる乱歩。

「賢治、商工会の管理台帳は？」

「はぁー…あ、駄目だ。これには４コマ漫画載ってないや」

「すまん」

「賢治君」

忙しそうに動いていた賢治を乱歩が呼び止める。

「近所に良い感じの殺人事件ないか調べてくんない？」

「良いですけど……後で社長に怒られますよ？」

社長という単語を聞いて乱歩は肩をビクッと跳ねさせた。

そして机に突っ伏し、

「……矢っ張りいい」

と言った。

「社長！」

国木田がそう言い、今まで座っていたAは漸く立ち上がった。

場所を変えて会議室。福沢は国木田に話を進める合図をした。

「誘拐を目撃した観光客が偶々撮影したものです」

「…有触れた型(タイプ)だ」

「はい。車台番号(ナンバー)も偽造でした。
しかし横浜でこの手の偽造業者となると限られます。
心当りの修理業者に賢治が当った所、快く教えて貰えました」

『じゃあその業者は……』

「貨物自動車(トラック)の所有者はカルマ・トランジット。
密輸業(ミュール)あがりの運び屋です」

「其奴(そいつ)らに聞けば輸送先が判る、か」

「はい。組織(マフィア)外で誘拐の全容を知るのは此奴(こいつ)らしか居ません。
谷崎が調査中です」

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