[文スト]中島敦には、可愛い双子の妹が居ます:2[中島敦]

59:私の本心…… ページ23

Aが素早く動き、国木田の事を強く突き飛ばした。

いきなり飛ばされた国木田は状況を呑み込めないでいる。

あの乱歩までもだ。

『そんな風に…言わないで下さい…！』

表情の変化はよく分からないが、Aは怒りともとれる感情をしていた。

しかし、その怒りは意外にもすぐにおさまった。

『すいません国木田さん…突き飛ばして』

「否……お前からすれば唯一の家族が拐われたんだ。
そんな風になるのも……無理はない」

「A……その、ごめん」

社の大黒柱である乱歩もAに謝罪した。

『いえ、私が悪いですから』

「警察に通報したら？」

「敦は災害指定獣として手配中です。
事態が露見すれば探偵社も側杖を」

「でも！何かしかるべき理屈を作れば「あのぉー」」

ナオミの声が谷崎の発言を遮った。

「殿方の大好きな『筋』とか『べき』とかを百年議論して決めても良いのですけど……」

ナオミは妖艶に微笑み、隣の人物…福沢を勧めた。

「「社長！？」」

福沢の登場に、先程まで座っていた乱歩はガタッという音を立てて立ち上がった。

「申し訳ありません。業務が終了次第、谷崎と情報を集めt「必要ない」」

福沢は国木田の側に居るAを見た。

その表情には…微かな不安と絶望…そして恐怖。

「全員聞け！
新人が拐(かどわ)かされた。全員追躡(ついじょう)に当たれ！
無事連れ戻すまで現業務は凍結とする！」

『凍結……？』

福沢はAに寄り、優しく頭を撫でた。

「案ずるな。兄は連れ戻す」

『……ありがとうございます』

「しかし、幕僚護衛の依頼が…」

「私から連絡を入れる。
案ずるな。小役人共を待たせる程度の貸しは作ってある」

「社長〜善いのほんとに？」

乱歩が文句があるように言った。

「……何がだ乱歩」

「何ってそのー…理屈でいけば」

「仲間が窮地。助けねばならん。
それ以上に重い理屈がこの世に有るのか？」

福沢にそう言われ後ずさる乱歩。

「国木田」

「はい」

「三時間で連れ戻せ」

「はい！」

その一言で全員動きだした。

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