[文スト]中島敦には、可愛い双子の妹が居ます:2[中島敦]

54:表情って…大切ですね ページ18

あの後、気絶したお兄さんと鏡花さんは探偵社へ連れ帰り、お兄さんは鏡花さんより早く目覚めていた。

「また面倒を持帰ったな」

そう言われて上を見上げると国木田さんが立っていた。

「蓄電池(ﾊﾞｯﾃﾘｰ)は抜いてある」

ヒョイッと投げられた鏡花さんの携帯を私は受け取る。

「僕がもっと早く気付いていれば」

「気にするな。お前に出来る事はない」

そう言ってパラ…と新聞を広げる国木田さん。

渡された時に見たページには鏡花さんの凶行について書かれていた。

「あれは手遅れだ。
あの娘は、界隈では名の通った暗殺者だ。

容姿で油断させ、敵組織ごと鏖殺する。
だが急激に戦果を挙げすぎた。

顔が知れて捕まるのは時間の問題だ｣

「そんな…悪いのは彼女の異能を利用してる奴なのに」

『異能が人を幸せにするとは限りません。

お兄さんなら…よく知ってると思いますよ』

私がそう言い終わると、扉が開いた。

中から顔を出したのは与謝野さんだった。

「目覚めたよ」

中に入ると鏡花さんが寝台(ﾍﾞｯﾄﾞ)に横になっていた。

「……大丈夫？ええと……

ここは探偵社の医務室。工合どう？」

鏡花さんは何も話さず黙っている。

「娘、黒幕の名を吐け」

「………」

「マフィアの部隊は蛇(ｳﾜﾊﾞﾐ)と同じだ。

頭を潰さん限り進み続ける。

答えろ。お前の'上'は誰だ」

「く、国木田さん」

「……橘堂の湯豆腐」

さっきまで黙っていた鏡花さんが口を開いた。

「へ？とうふ？」

「おいしい」

「……？」

『食べたいんですね』

「食べたら話す」

「なあんだ。良いよその位」

太陽のような眩しい笑顔を見せるお兄さん。

それとは裏腹な国木田さんの嫌悪な顔の意味を、お兄さんと私は後で知った。

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