短 ページ16
恋文
りんごジュースの3本目に入りりんごジュースにストローを刺したところで彼がようやく口を開いた。
「…お前は俺が嫌いか?」
何を言うかと思えばそんな今更なことを聞いてくるで、思わず林檎ジュースを落としそうになる。
「な、何よ急に?」
「いいから答えろ。」
「嫌いだったら今話してないわよ。」
「…そうか。」
やっぱり可笑しい。
口からストローを離し彼と向き合い真剣に尋ねる。
「熱でもあるの?」
「ない。平熱だ。」
「頭をぶつけた、とか?」
「お前じゃないんだからそんなヘマなどしない。」
「三日三晩、飲まず食わずとか?」
「それこそ今頃立っていられないはずだが?」
「なら!政府に頭を弄られ_」
「それはない。」
「……ホームシック?」
「…意味は知らないが恐らく違う。」
私がじゃあ他に_という前に彼は呆れたように頭に手を当てた。
「今日の俺が可笑しいのは自分でも理解しているつもりだ。……だからお前が心配する必要は無い。」
「えっ!?そうなの!?」
私が彼に原因を教えてと言ったが、顔をそむけられた。
「自分の頭で考えたらどうかな?その頭はただの飾りではないだろう?」
「飾りって…!」
馬鹿にされたのがむかついたので
刀剣男士の戦いなど目もくれず一人で一生懸命考えた。
「駄目!全然わからない!!」
考え始めてすぐ頭を抱えて言うと隣から冷たい目線で私を嗜める声が聞こえる。
「騒々しい。…考える時ぐらい静かにできないのかな?迷惑極まりない。」
「そのドS発言やめてちょうだい!」
「どえす…?」
「この無自覚!」
あのフードの男の顔はきっとかっこいい部類だ。身長はあるし運動神経もある。性格もいい。
それはこの時間を一緒にいるせいで何となく分かっていた。
…が、彼は毒舌だ。
残念ながら私はマゾヒスティックじゃないので全くときめかない。嬉しくない。
「…無自覚なのはそっちだ。」
「へ?」
その瞬間、顔の前の垂らした紙が上に上げられて視界が明るくなる。
フードの男が、私の目と鼻の先にいてフードに隠れていた彼の顔が嫌でも綺麗だというのがわかる。
「君が好きだ。」
私の中の世界が止まった。
持っていた林檎ジュースは床に落ちる前に彼が手に取って私に渡す。
「…あ、りがと。」
驚きのあまりその言葉以外何も言えず、ただ林檎ジュースを受け取る。
「…、鈍感娘。」
綺麗な顔を歪めてそう言うと私の視界がまた少し暗くなり彼は離れた。
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作者名:沙恵燬 | 作成日時:2019年2月1日 1時