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中〜夢主ちゃん、海に行く〜13 ページ11

「…俺は大将が好きだ」

「っ!?や、藪から棒に何?」

いきなり告白まがいな言葉をかけられて、ビクッと身体が反応する。


「…。
毎日ひたむきに向き合ってくれた大将が、
どんな時も優しくしてくれた大将が、
あの本丸を明るくしてくれた大将が、
あの女から守ってくれた大将が、
凍てついた心を溶かしてくれた大将が、
俺は好きだ。

誰より尊敬しているし、何よりその後ろ姿を見たから今の自分がいる」

「…ありがとう?」

「けどな大将、俺はお人好しじゃない。
生憎俺は大将が望むならそれでいい_とか思ってないんだぜ?

愛でてくれないなら大将の目にうつる俺以外を切り捨てるまでだ。大将が俺を置いていくなら地獄の果てまで追いかけてやる。…俺が嫌いだろうとなんだろうと絶対にはなしてやれない」

純粋な告白にしてはなんだか色々と歪んでいる気もした。
いや、そもそもこの告白に対しなんて言えばいいのか知らなさすぎて困惑してしまう。

「ええっと、…?」

「初めは持ち主に対する珍しい過度な執着だと思ってたんだがな…。
ははっ、…どうやら相当酷くなってんだ。

例えば、その腕。
誰かに触るのを見る度に切り落としたいって思っちまう。
そうすれば否が応でも俺を見てくれる。前に大将が倒れた時みたいに俺が付きっきりで世話をしてあげれるってな。
笑えるだろ?
俺っちはただの刀で、あんたは人間だっていうのに」

彼の白い足が一歩一歩自分に向かって歩くので歩きやすいようにその分後ずさりして道を譲っていると「逃げんな、大将」と恐ろしいほどの破壊力抜群イケメンボイスが炸裂したために固まってしまう。

やだ、イケメン…


距離が後一歩のところで、白い腕が目に入った。

長義だ。

私の前に立って既にその体制に入っている彼が私に引けと暗示しているのがわかる。

「…俺が欲しいものを何もかも手に入れている旦那が、渇望してる俺の邪魔をするのは間違っていると思わないか?」

「…、先程の発言を見逃せるはずがないだろう」

「安心しろ、旦那。俺はまだ手を出しはしない。
さあ分かったら早く引いてくれ。…うっかり大将に触るなよ?」

彼が好きじゃないらしい薬研はそう断言した。

……さっきの長義の刀の振り落としの件を案じてくれているのだろうか?

なんか少しピントがズレている気もしたが、それ以外に心当たりがないでそういう事だと割り切る。


にしても…薬研のその威風堂々とした態度には漢だ、と思わずにはいられなかった。

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作者名:沙恵燬 | 作成日時:2019年11月25日 2時

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