漆─へし切長谷部─ ページ8
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廊下が劣化し、2人分の足音により一定間隔で軋む音が響く。どちらも口を開かないせいで、その音はとてもよく聞こえた。そして辿りつくのは一つの小さな部屋。
「ここが、主の部屋になります」
返事がないことを不思議に思い、もしや着いてきていなかったのではとちらりと後ろを振り向く。すると、嫌悪を隠しもせず現す審神者。
とりあえず着いてきた上で、俺の話は聞いていたようだ。そういえば俺達と喋る気はないんだったか。
ここは審神者部屋。とは言えど何も特別な構造ではなく他の部屋同様、とても汚い。
この表情を見る限り、言葉は素っ気ないものの、どうやら彼女は綺麗好きなようだ。
既に政府からは荷物が送られていたようで、知らぬ間にすっかり今の審神者仕様になった部屋を眺める。人が変わると部屋も変わるが、前の審神者が多かったからか、やけに荷物の少ない、質素な部屋に感じた。
道を開けるように戸の傍に身を避けると審神者は部屋に入りって何でもないように置かれた自らの荷物に目を丸くしている。
そして1通り部屋を物色し満足したのか、俺の方を向いて中央に正座し、畳を指差す審神者。
「座れ、ということですか?」
頷く彼女。本来自ら入りたいとは思わない場所だが、呼ばれたとなれば話は別。失礼します、と頭だけ下げて腰を落として中へ入る。
『まず、お前は誰だ?そして、お前達は何だ?』
目の前に差し出される1枚の紙。
ああ、こいつは本当に何も知らされていないのか。可哀想に、こんな所へ。なんて、思ってもみないことを考える。所詮この『可哀想』とは相手を哀れむだけの感情だ。
「紹介が遅れて申し訳ないです。へし切長谷部と申します。
これからよろしくお願いします、主。
簡単に申しますと、俺達は『刀』です。
まぁ、実際のところは付喪神に分類されるのですが。
そして、貴女はこの本丸の審神者、という立場になります。
まぁ言ってしまえば、この刀の持ち主、ということですね。俺達を率い、統括することが主な役割です」
簡単に説明をしながらちらりと彼女に目をやる。しかしやはり何も分からないようで、分かっているのかいないのか、小さく首を捻っていた。
『じゃあ長谷部、お前も刀だと?』
「左様で」
まぁ、流石に目の前で話している人間が刀だ、と言われても……な。
すると目の前に差し出される紙。
『まぁ細かいことはいい。風呂、行くぞ。』
「……はい?」
その何の脈絡もない誘いに思わず間抜けな声が漏れた。
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朔夜(プロフ) - あみあみさん» 今週もコメントありがとうごさいます!来週テストですか・・・頑張って下さい!私もそろそろ学校が始まるので更新ペースが・・・頑張りますね・・・これからもよろしくお願いします! (2017年9月16日 13時) (レス) id: 69535f952d (このIDを非表示/違反報告)
あみあみ(プロフ) - ついに続編かーーー 来週楽しみダーーー あっ、来週私学校のテストダ・・・ よし、この小説を読むためにテストがんばりまーーーーす (2017年9月16日 12時) (レス) id: 3f689df719 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - あみあみさん» コメントありがとうございます!どうも今回、更新日時表示が途中までオフだったみたいで・・・私自身「何故!?」と思いながら何度も更新したので見にくかったと思います・・・すみません! (2017年9月10日 9時) (レス) id: 69535f952d (このIDを非表示/違反報告)
あみあみ(プロフ) - 更新されてからすぐに読みました 朔夜さんサイコーーーーーーー (2017年9月10日 2時) (レス) id: 3f689df719 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - ゆらさん» わざわざコメントありがとうございます!主人公は私も「こんな友達ほしいなぁ」と思いながら作ってるのでそう言っていただけて本当に嬉しいです!これからは忙しくなるので更新ペースは落ちそうですがどうかよろしくお願いします。 (2017年9月2日 23時) (レス) id: 69535f952d (このIDを非表示/違反報告)
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