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ひとまず面倒を見てくれる者が見つかった孤児院一同に、Aは再び提案する。
1番初めに述べた通り孤児院の人々はこの地域を出なければならない。
「いつまた兵隊さんたちが来るか分かりません。今ならまだ間に合います」
そう言うなり、Aはいつの間にか取り出したのかトランクを勢い良く開け、何やら物で溢れ返っている中を漁る。
ヘンリーが横で手伝いながら見ていくと、何枚にも折り畳まれた古い紙を手に取った。
Aが丁寧に広げていけば、その紙には世界の人々が何度も目にしたことのある物が描かれていた。
広い海に囲まれた、小さな島々と比較的大きな島。
エイ国の地図であった。
地図には赤字で市や街、施設や山の名前が記されており、白と黒の線で鉄道と駅まで記載されている優れ物である。
エイ国中心部分にはあの時計台の絵が描かれていた。
この辺りについても事細かに載っており、今自分たちが何処にいるのか理解できる。
Aはまず現在地を小さな指でしっかりと指す。
「ここが今私たちがいる所です」
次にエイ国の中でも北の方角へ指を滑らせ、丸く弧を描いた。
「ここがキャロル山脈です。人口こそ少ないですが周りは緑に囲まれていますし、近くに大きな川もあります」
川と言う単語を聞くなりナンシーが身震いしたので、何人かがぷっと吹き出す。
「軍隊の基地は…」
「ありません。都市化が進んでいませんので、交通の面で不便だからかと」
言われてみればキャロル山脈付近に鉄道の線がなかった。
ふむふむとアイザックが相槌を打ち、方角やルートを確認していく。
すると、Aの肩をヘンリーがとんとんと叩いた。
どうしたのと振り返るAに、彼は親指を後ろの方へくいっと向ける。
その少し遠くにはヘンリーによって見事玉砕した軍人らがちりじりに倒れているが、それがどうしたのだろうか。
不思議そうに首をかしげるAに、ヘンリーはまた何か書き始める。
すっと紙を差し出すと、Aはまたも大きな目を見開くこととなった。
「…ほ、本当にそうするの？」
思わず聞き返すが、ヘンリーは相変わらず眉1つ動かさずにこくりと頷いた。
何度か瞬きを繰り返し気まずそうにしていたAだったが、彼のことだ、何か思うことがあるのだろう。
彼の考えに賛成することとした。
遠く山の頂上から、最近目覚めるのが早くなってきた太陽が顔を覗かせていた。
僕の寝ている間に面白いことがあったようだねと、他人事のように思っているに違いない。
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白梅 和平(プロフ) - ccさん» コメントありがとうございます！第3章は特に内容が複雑なため書くのに苦労しているのですが、ちゃんと伝わっていると分かり安心しました。久々のコメントで嬉しかったです。更新頑張ります！ (2018年4月8日 14時) (
レス) id: 4fe8a6b6f6 (このIDを非表示/違反報告)
cc(プロフ) - 情景描写が繊細で、独特な世界観にすぐ引き込まれてしまいました。もっと評価されるべき作品だと思います。続き、楽しみにしています！ (2018年4月7日 10時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白梅 和平 | 作成日時：2017年7月4日 21時
