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閉じていた瞼を開くなり、Aはさながらネズミ捕りのように勢い凄まじく跳ね起きた。
毎日丁寧に梳かしている髪に酷い寝癖がついているが、そんなことはもうどうだってよい。
ついに、ついにだ。
ついに今日がやってきた。
待ちに待った、10年近く生きていて1度も行ったことのない屋敷の外へ、私は行けるんだ。
この興奮と感動は言葉で言い表せないほどであって、頬を赤く上気させてやっと他人に伝えられる。
目は今にも泣きそうなほど潤っていて、体の底から湧き上がる期待が取り換えられているさまであった。
これほど外に恋い焦がれ、憧れた人間がいただろうか。
いやいない、後にも先にも彼女だけである。
まあ待ちなさいなAさん、お父様がお出かけになられてからよ。
ええそうね、お父様に知られては計画が台無しだわ。
いつの間に脳内で友人を創っていたのか、彼女は己に落ち着くよう指示をする。
おかげで荒ぶっていた気持ちを抑え込むことができ、パジャマ姿のまま扉にそっと耳をつけた。
全神経を一点に集め扉の向こうにと聞き耳を立てる。
日が顔を出し始めたこの頃に、ルイスは屋敷を出発する。
だがその前に別れを惜しんでAに一目会いに来るわけだが、まだルイスはここへ来ていなかった。
今現在Aが聞き耳をしているが、こちらに近づいてくるどころか廊下を歩いている足音1つさえまったく聞こえてこない。
やがて窓から日の光が差し込んでくるもその現状は変わらず、訝し気にAは眉を顰めた。
「おかしいわ…」
自分の耳が悪いのではないかと1度扉から耳を離したその途端、コンコンコンと扉がノックされた。
「わあ！？」
心臓がバクンと弾んだと同時に悲鳴を上げると、扉がすぐに開かれる。
「おやA、もう起きていたのかい？」
扉を開けた人物は、まあなんと言うことだろう、ルイスであったではないか。
もろに不意打ちを喰らうAは再び悲鳴を上げそうになるものの、ここでまた例の友人が話しかけてくる。
だめよAさん、ここは平然と過ごしてばれないようにしなくっちゃあ。
ええそうね、ごめんなさいね。
「あ……あ、き、今日は早く目が覚めちゃったのよ。本当よ！」
平然とは程遠い慌てぶりに我ながら嘘を吐くのが下手だと反省する。
しかしAのそんな事情など露知らず、ルイスは「ああ、そうだったんだね」と笑顔で返す。
そして改め互いに朝の挨拶を交わし、ルイスはもう娘が聞き覚えてしまったあの言葉を放った。
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白梅 和平(プロフ) - ccさん» コメントありがとうございます！第3章は特に内容が複雑なため書くのに苦労しているのですが、ちゃんと伝わっていると分かり安心しました。久々のコメントで嬉しかったです。更新頑張ります！ (2018年4月8日 14時) (
レス) id: 4fe8a6b6f6 (このIDを非表示/違反報告)
cc(プロフ) - 情景描写が繊細で、独特な世界観にすぐ引き込まれてしまいました。もっと評価されるべき作品だと思います。続き、楽しみにしています！ (2018年4月7日 10時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白梅 和平 | 作成日時：2017年7月4日 21時
