10. ページ10
「了解、ジン。ところで、俺まだこの子の名前も紹介してもらってないんだけど、」
「…おい、黙って聞いてやってりゃ、調子乗るのもいい加減にしろよ。この子この子って、アンタまで俺をガキ扱いするんじゃねぇ！」
「ああ、ごめん……いえ、すみませんでした。俺としたことが、つい。それで、お名前をお伺いしても？」
ジンへの態度やら論文のことやらが衝撃的すぎて、意識せぬうちにうっかり敬語の装いが外れていた。
初対面の青年相手にもジンと同じような気安い話し方をしてしまっていたことに今更気づき、慌てて修正しつつ彼の名を問う。
突然口調の変わった俺に、青年は元々吊り上がっている眉を更に吊り上げて訝しむ用な表情を浮かべたが、敬語を使われること自体に悪い気はしなかったのか、特に言及することもなく素直に答えて名乗った。
「ピンガだ。特別に、ピンガ様って呼んでもいいぜ？」
「おい、てめぇがピンガを名乗れるのはICPOの試験にパスしてからの条件だろう」
「ハァ？うるせぇんだよ、テメェが余計な口挟んでなきゃとっくにオレはピンガだったんだ。それに、オレの腕があればインターポール潜入程度の仕事は余裕でクリアできるっつの」
まるで威嚇する獣さながらにジンへと牙を剥く青年と、それに対して面倒くさそうに睨み返しながらも、ピクリと左手の指先が反応しているジン。
その様子に、これ以上彼らを会話させているとそのうち部屋に銃痕が刻まれることになると判断した俺は、ジンが何かを答えるよりも早く、青年の注意を自分の方へと引き付けることを選んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 81人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：櫂渦【とーか】
| 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時：2023年12月8日 22時
