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「まだ正式に決まった訳じゃないわ。でも、腕を見込んだラムが欲しがってるみたいだから、時期にそういうことになるでしょうね」
「フン、奴にしては珍しく随分と早計な判断をした気がするが…まァ、あの野郎が雑魚に足元すくわれたところで、俺の知ったことじゃねぇな」
煙草を灰皿に押付けながらそこまで喋ったジンは、これでもう話は終わった、と言わんばかりに一息に酒を煽り、グラスをカウンターに置いた。
ウォッカを待たずしてさっさと立ち去ってしまおう、という魂胆だったようだが、気になる言葉だけ言い残して退散するのを私が許すはずもない。
そして何より、それまでは舌打ちや歯軋りをしながらも何とか堪えていた青年の方が、彼を逃がす気は無いようだった。
「ジン？思わせぶりなこと口にしておいて、簡単に逃げられると思わないでちょうだい」
「…うぜぇ」
「ッテメェ、黙って聞いてやってりゃ好き勝手言いやがって！どうせプログラミングもろくに理解出来ねぇオッサンが、嫉妬で適当な妄想するんじゃねぇよ」
「あﾞ？」
「有名だぜ、ネズミ嫌いのジンってな。俺に獲物を取られたのが嫌だったんだろ」
「カタの着いたことにわざわざ口挟んでやるほど暇じゃねぇ」
「じゃあ、テメェの飼い犬より俺の方が優秀だからって八つ当たりしてんのか。残念だったなァ、俺のやってる崇高な開発は、無能なワン公には欠片も理解できねぇよ」
嘲笑うように青年がそう言った瞬間、ジンの口角が緩い笑みの形に釣り上がるのがわかった。
大好きなpuppyを完全に馬鹿にする発言はこの男にとって許し難い侮辱であるはずだが、もはや怒るのを通り越して、愉しくなってしまっているらしい。
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作者名：櫂渦【とーか】
| 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時：2023年12月8日 22時
