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事の流れはこうだ。
今から数えてちょうど五年ほど前になるだろうか、かつて組織が技術職不足に喘いでいた頃。
ボスから有用な人間の調達を命じられたウォッカが、ある一人の男を連れてきた。
そこそこに優秀だった彼は幹部になれるほどの実力こそ無かったものの、使い捨てるには勿体ない程度の利用価値を発揮して、幹部にも一目置かれる存在となっていた。
そうして、組織のために尽くし続けてきたその男が裏切ったのが、先日のこと。金と地位に目が眩んだのか、組織外秘の機密データを手土産に他の組織へ移ろうとしていたのだ。
だが、直前でその裏切りに勘づいた部下にあっさりと殺されてしまった。
まだ誰も勘づいていなかった裏切りを未然に防いだばかりか、始末まで一人でやりおおせて報告をあげたその部下の功績は大きい。
元々のエンジニアとしての腕が飛び抜けて優秀だったこともあって、それまでただの構成員にすぎなかったその部下にコードネームを与え手元に置きたいというのが、ラムの意向だった。
ボスもそれに特に反対はせず、事前に念の為に挨拶回りという体で現幹部たちに顔見せをさせた上で、問題がなければ “ピンガ” の名を与えて即幹部取り立てということで話が付けられているという。
言うまでもなく、その部下というのが今私の隣に立っている青年である。
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作者名:櫂渦【とーか】 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時:2023年12月8日 22時