[映画編] サブマリン。 (ページ18)

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予想に反して、ジンの反応は至極あっさりとしたものだった。

無言のまま一瞬ギロリと彼を睨みつけたかと思えば、直ぐに殺気を霧散させ、そのまま青年からは目を逸らしてしまう。
こちらはてっきり発砲沙汰になると覚悟したというのに、彼は拳銃を抜くどころか、懐に手を伸ばすことさえしなかった。

「ベルモット。名前も言えねぇ雑魚なら引っ込ませろ、目障りだ」

言いながらジンは煙草を口に咥えていて、もう青年どころか私のことさえ一瞥もしない。怒れる死神が顔を覗かせたのは先程の一瞬だけで、今私の目の前にいるのはまるで普通の、ただ少し機嫌が悪いだけのジンだった。

その様子から察するに、先程のことで腹を立てていると言うよりも寧ろ、青年のことは相手をする価値もない子供だと完全に見下したのだろう。

確かにジンは、無意味な争いをするくらいならば格下には何を言われても無視を貫くような男だ。
Puppyとのことについて下衆な勘繰りをしている馬鹿な構成員が、いつまでも大きな顔で根も葉もない噂を吹聴し続けられているのが、そのいい証拠。

幹部以上の人間が同じ内容を口にすれば即座に銃口が向けられるだろうが、虫の羽音に一々目くじらを立てるつもりはないということだろう。

とはいえ、間もなく幹部になるだろう青年のことを完全に虫扱いされてしまっては私が困る。
仕方無しに、私はそっぽを向いてしまったジンの顔をのぞき込みながら声をかけた。