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「ッ、はァ?…まさかテメェ今、俺のこと言ったわけじゃねぇよな?」
「わかってやがるなら名乗れ。一応聞いてやる」
「ハッ、話題になった構成員の顔も知らねぇのかよ!幹部のくせに情弱なんじゃねぇの、オッサン」
子ども扱いに怒ったのか、それとも認識されていなかったことに苛立ったのか。恐れ知らずにも真正面から、ジンに喧嘩を吹っ掛けた青年。
瞬間、肌がヒリつくほどの殺気を感じたのは、きっと私だけじゃないはずだ。
それまでカウンターの中で静かにグラスを磨いていたバーテンは、今や可哀想な程にその手を震わせながら、グラスを取り落とさないよう必死に握りしめている。
幹部さえ一目置いて対等以上の扱いをすることの多いジンが、ほぼ確定とはいえ幹部未満の構成員に、明らかに煽りと分かる言動をとられたのだ。
舐められている、なんて可愛いレベルじゃない。
バーの空気は完全に凍ってしまったし、ジンはきっと怒って拳銃を取り出すだろう。
正直、青年のことをどう庇ってやればいいのか、私でも頭を抱えたいくらいだった。
けれど、この青年は技術者としては申し分なく優秀で、現在はラムが自分の部下に招くことも視野に入れつつ、ボスに幹部採用の進言をしているほどの人物だ。
流石に、口と態度が悪いというだけの理由で、ジンに殺させる訳にはいかない。
だから、何とか上手くジンの怒りを逸らしてやらないと、と思っていたのだけれど。
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作者名:櫂渦【とーか】 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時:2023年12月8日 22時