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「わかりました。では、ピンガとお呼びしますね」
「おー、そうしろ。んで、アンタの情報は一通り知ってるから自己紹介は要らねぇよ。飼い主頼りの、か弱いペットサマだろ?」
「ええ。その認識で構いませんので、取り敢えず電話番号とメールアドレスを教えていただけますか」
「いいぜ。ってか、今オレ割と煽ったつもりだったんだけど、アンタ矜持とかねぇのか?」
「ジンを頼っているのは事実ですから。それに、見た目が弱く見えるとしたって、敵の油断を誘えるなら俺には寧ろ好都合です。別段、腹も立ちません」
「ハッ、前言撤回する。アンタ、実は意外と図太いタイプだ」
「…Je vous laisse imaginer」
「想像、任せる。ご想像にお任せしますってとこか?基本的な単語は独学で叩き込んだからわかるぜ」
実力試しのつもりで俺が口にしたフランス語をあっさりと聞き取ったピンガが、大して面白くもなさそうに嘯く。
独学にも関わらず日本語に無い発音の交じる単語もしっかりと聞き分けているあたり、流石の学習力と言うべきか。
何にせよ、教える俺の負担は随分と軽く済みそうだった。
その事実にほっとすると同時に俺は、優秀な生徒にフランス語を教えられるという事実に対して、少なからぬ喜びを抱いていた。
弟やその友人に兄として接していた時期が長かったこともあってか、学ぶ意志のある誰かに物事を教えることは昔から嫌いじゃない。それが優秀で向上心も高い相手となれば、尚更だった。
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作者名:櫂渦【とーか】 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時:2023年12月8日 22時