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喫茶店を出れば外はもう秋の薄暗い夕闇に包まれていた。淡い紫色の空を背にまとった黒のポルシェはやはり格好よく、まるで一枚の絵画のように綺麗だ。
乗れ、 と短く言って運転席に座り込んジンを見習って、俺も助手席に座る。
車内ではお互い特に何を喋る訳でもないが、穏やかな沈黙に支配された二人きりの空間では下手に何かを取り繕う必要も無いので、それが心地よかった。
ふと、隣でハンドルを握り、前を向いているジンの顔に目をやった。
その顔に似合わず丁寧な運転をする彼は、本当に車が好きなのだと思う。
このポルシェだって車体はもちろん、車内にも目立つ汚れ一つない。きっと、任務の度に何度も汚れ、傷ついてきたこの車を彼はその都度綺麗に修復して、乗り続けているのではないだろうか。
名探偵コナンの物語からは、ジンにこんな一面があることは知り得なかった。やはり、物語とこの世界の現実とは、似て非なるものなのかもしれない。
そんなことをぼんやりと考えながら、心地よい沈黙と揺れに身を任せていた俺は、いつしか夢の世界へと旅立っていた。
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作者名：櫂渦【とーか】
| 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時：2021年2月9日 19時
