【コナン】寝て起きたら前世の記憶思い出した。【男主】 (ページ22)

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だからこそ俺のことを何度も繰り返し弟と呼ぶことで、自信が持てない自分自身を奮わせていたのではないか。

そして、そんな兄さんに俺は何度も救われた。

初めて母さんに叱られた時、
初めてゼロと喧嘩をした時、
初めて大きな怪我をした時、
初めて挫折を経験した時。

その度に兄さんはいつも、俺をただの弟にしてくれた。それ以上でも以下でもなく、ただの、だけど特別な兄さんの弟。
そうしてしばらくたって落ち着いたら俺はまた俺に戻るのだ。

母さんの息子の景光に。
ゼロの親友のヒロに。

俺は俺だけど、俺じゃない。
だけど俺は、俺だ。
俺は、俺以外になれない。
俺は俺でしかない。
だから俺は、俺に勝てない。

そんな、思春期に誰もが抱える抽象的な悩み。

最後には景光が自分で乗り越えなきゃいけないことだからね……と言いながらも、どうしても俺が耐えられなくなってしまった時にはそっとその悩みから解放してくれたのもやっぱり兄さんだった。

俺の兄さん。
俺は、兄さんの弟。

それがただ、幸せだった。

やがて月日は流れ、俺は成長し、俺の両親はまた死んだ。俺にとっては二回目の、だけど兄さんにとっては初めての親との別れ。

事件でも事故でもなかったから、亡くなったのはそれぞれ別の日だったけれど、一年と開けずに次々と二人を失ったことで俺はまた少し不安定になった。

そんな俺を助けてくれたのは、兄さんじゃなくてなくゼロだった。兄さんが助けてくれなかったわけじゃない。ただ、ゼロが助けてくれたのだ。

思えば兄さんはこの時から既に、いつか自分がいなくなることを想定していたのかもしれない。

俺がゼロに救われる様子を、兄さんはただそうっと静かに見守っていてくれた。手を貸すわけでもなく、見捨てるわけでもなく、ただそっと。

兄さんだって、辛かったはずなのに。

だけど、だから、兄さんはすごい。
すごいのだ、と声を大にして言いたい。

他の人がなんと言おうと、俺がすごいと言うのだから俺の兄さんはすごいのだ。

そんな兄さんが、俺の傍からいなくなる日が来るなんて、その頃の俺には想像すらできなかった。