【コナン】寝て起きたら前世の記憶思い出した。【男主】 (ページ12)

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それから十数分後。

「悪いな諸伏、遅くなった」

開口一番に謝罪する教授に、お気になさらずと声を返す。少し息の上がっている教授の後ろから入ってきたお客人の様子は、彼とは対照的に至極落ち着いたものだった。

ここ東都大学には、日々たくさんの”部外者”が訪れる。このお客人のように大学で行われている研究に興味を持った企業の人間や、他の大学との合同実験の協力者、取材に訪れた新聞記者やテレビカメラマンなど、例を数えあげればきりがない。

きっと、全く関係の無い不審者が紛れ込んでいたところで、誰も気にとめないだろう。
要するに、見覚えのない顔が構内にあることなど日常茶飯事なのだ。

だが、とここで俺は目の前のお客人に意識を戻す。

鋭い瞳に少し強面ながらも端正な顔立ち、そして腰まで伸ばされた美しい銀髪──やはりあの髪の持ち主はこのお客人だったらしい──は、この男の研ぎ澄まされた刃のような雰囲気も相まって彼自身をより際立たせていた。

きっと、すれ違った十人が十人皆彼を振り返ったことだろう。目撃情報が多いのにも納得だ。

しかし、今の俺にとってそんなことはもはやどうでもいいことだった。問題なのは、俺がこの男に見覚えがあることだ。

それも、前世で。

名探偵コナン、男、銀髪といえば、誰もが思い浮かべるだろうあの人物。新一がコナンになったきっかけにして原因、作品における悪の象徴でもあり、倒されるべき主人公の宿敵。

数時間前に銀髪を見た時点で、俺はこの可能性を考慮しておくべきだったのだろう。まさか彼がここんなところにいるはずないという先入観だけで想像すらしようとしなかった俺はあまりにも短慮だったとしか言いようがない。

もし教授のご好意がなければ、もしお客人が俺に興味を持ってくれていなければ、俺は重大なチャンスを逃すところだったのだ。

特徴的な銀髪を目にしておきながら、触ってみたいなぁなどと呑気に考えていた少し前の俺を殴りたい。