可惜夜【すずめの戸締まり】

17.鈴芽side ページ19

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「─────私、知らなかった！草太さんの試験のこと！！」






ミミズのいる方へ息を切らして街を走りながら、私は草太さんに言う。







「昨日だったなんて、どうしよう⋯！？」

「君のせいじゃない」

「でも⋯！だって！私が要石を抜いたから！」

「大丈夫だ。今日こそ全てを終わらせよう。後ろ戸を閉じ、猫を要石に戻して、今日こそ俺は元の姿に戻るんだ！」









元を辿(たど)れば、全て私のせいなのに、草太さんは私のことを庇って、慰めてくれる。







草太さんのことなのに、私が思わず泣きそうになる。







草太さんに、元の姿に戻って欲しい。
けど、不謹慎だけど、ふたりの旅が終わって欲しくないとも思う。








こうやって、草太さんの隣を並んで、旅ができるAさんが羨ましい。









そんなことを思っていると、激しくうねるミミズは────気づけば目の前に。







ミミズは、道路と並行するようにうねっていて、その奥には、川の流れる窪んだ土手。







｢⋯ねぇ、後ろ戸の場所って──────」

｢ああ。この先、神田川の下流か⋯！｣








早く、ミミズの根元に行かないと⋯！







もし、ミミズが倒れたら──────








｢──────すーずめ！｣

｢ダイジン⋯！｣







私の足元には、いつの間にかダイジンがいて、走る私の後を着いてくる。







｢遊ぼう！｣








すると草太さんは、ダイジンに怒鳴りながら私の手の中からすり抜け、ダイジンを追いかけて車道に飛び出ていく。






通行人は、物珍しいものを見るようにスマホを構えて写真や動画を撮っている。








｢草太さん⋯！！｣









私は草太さんとダイジンを追いかけて、ひたすら走った。








横断歩道もない車道を一気に駆け抜けて、クラクションを何度も鳴らされ、やっとの思いで草太さんに追いつくと、ダイジンの姿はなくて─────草太さんはじっと橋の下を見下ろしていた。








─────息を呑(の)んだ。








ミミズは─────電車用のトンネルから噴(ふ)き出していた。








あの奥に、後ろ戸が──────？






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