可惜夜【すずめの戸締まり】

16. ページ18

-







朝から草太を心配する朋也くんからのLINEのメッセージが鳴り止まなくて、草太の家に行くことになって








草太の部屋に入ると、知らない高校生くらいの女の子がいて、慌てて朋也くんに弁解してて──────







草太に、なにかあったんだなって、すぐにわかった。








『──────早く教師になりたいなあ』








草太は大学に入ってから、何度も私に向かってそう言っていた。







「草太は絶対にいい先生になるね」って言うと、嬉しそうに「ありがとう」って目を輝かせていた。








あれだけ一生懸命に目指していたのに、試験に来なかった理由は、ただひとつ。








きっと、戸締まりの旅で、なにか大変なことに巻き込まれている。








さっきから鈴芽さんは、朋也くんの話を聞きながら、無意識なのか、見覚えのない壁際のこどもイスに、何度も視線を移していて










呪いのような魔法のような匂いを密(ひそ)かに感じて──────あの椅子は草太なのかな？って、驚くことなく私は受け入れていて、何があったのかは、なんとなく想像がついた。












でも草太は、昔からかっこつけたがりなのを知っていたから、私は朋也くんにも鈴芽さんにも知らないふりをしてみせた。








「⋯A、行こうぜ」








朋也くんはイライラしてて、部屋を出ていこうと私の腕を引いてドアを開ける。








「⋯ふふ、朋也くんは素直じゃないね？」

「⋯うっせえ」









目を逸らして、私の頭を小突いてから、恥ずかしそうに自分の頭を搔く朋也くん。









草太の部屋を出て、階段を降りている途中──────突然鳴り響く、不協和音。









──────地震が来る。










急いで周囲を見回すと────すぐ近くに、巨大なミミズが。










恐れていたこの時が、ついに─────────来てしまった。








-

17.鈴芽side→←15.草太side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す