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三人の金のない空腹者。
どうにかしてこの状況を打破できないかとそれぞれが考えていた時、向こう岸から「おーい」と声がした。
声のした方には金髪の男が立っている。
「こんな所におったか唐変木!」
「おー、国木田君ご苦労様」
国木田と呼ばれた人物はさらに怒鳴る。
だがそれを男はあまり聞いていなかった。
『誰?』
「彼は私の同僚さ。あ、そうだ彼に奢ってもらおう」
「へ?」
その言葉を聞いた国木田が「聞けよ!」と怒鳴るが、それでも男はヘラヘラしたまま青年の方を向いた。
「君は⋯⋯まぁ聞きたいことは色々あるけど、名前は?」
『⋯⋯天使』
「え?」
『天使』
なぜ自分がここで天使と名乗ったのか、それは青年自身にも分からなかった。
だが、何故かここに来る前、沢山の人にそう呼ばれていた気がした。
「ふむ⋯⋯ま、それも含めて後で聞こう。君は?」
「中島⋯⋯敦ですけど」
「着いて来たまえ天使君に敦君。何が食べたい?」
「はぁ⋯⋯あの⋯⋯茶漬けが食べたいです」
『え、君それでいいの?』
人は余程の好物でない限り久々の食事に茶漬けは選ばないだろう。
案の定、天使には不思議がり、太宰は笑いだした。
「はっはっは!餓死寸前の少年が茶漬けを所望か!うん、面白いね。天使君は?」
『んー、何か甘いものが良いな』
「良いよ、国木田君にそれぞれ三十杯くらい奢らせよう」
「人の金で太っ腹になるな太宰!」
国木田はまた怒鳴る。
それを見た天使が『すごく元気だね』と言ったので太宰はさらに笑いだした。
だが、敦は別の疑問点があった。
「太宰?」
「ああ、私の名だよ」
太宰の透き通った声がヨコハマの空によく響く。
「太宰、太宰治だ」
■
思っていた以上に見ていただいて作者感激です。
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暁月臨(プロフ) - 凄く面白いです!更新待ってます!! (6月24日 16時) (レス) @page16 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
雪ん子(プロフ) - 凄い好きです❗️続き待ってます! (2023年4月26日 17時) (レス) @page16 id: fa924563b5 (このIDを非表示/違反報告)
クラスペディア(プロフ) - 面白かったです!更新待ってます✧*。 (2022年12月22日 13時) (レス) id: d83e92e5af (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 面白いです✨ (2022年12月20日 5時) (レス) @page14 id: a32747b1ee (このIDを非表示/違反報告)
響輝@お気に入り400人突破ベリサンキュ(プロフ) - 面白かったです。続き楽しみにしてます (2022年11月24日 0時) (レス) id: d6b5ec7764 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:棘屋 | 作成日時:2022年11月21日 7時