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「杏、なんで教えてくれなかったの!」
「む。すまない。しかし伝える必要はあるか?」


 帰り道、駅までの道中で杏に訊ねれば急に真剣な表情で私に訊き返してきた。
 あまりにも真剣だから思わず目を逸らしたくなったが出来なかった。手には先ほどのコンビニで購入したジャンクフードがあるが食べることも出来ない。


「いや、別に」
「Aは宇髄のことを好いていないから伝える必要はないと思っていた」
「そっか」


 杏からの返答は、何も可笑しいことはない。別に私は宇髄くんのことが好きでも何ともない。だから杏がしたことは間違っていない。そう間違ってなんかいない。
 けれど何故こんなにも私と杏の間に流れる空気はぴりぴりとした今にでも火花が散りそうなのだろうか。こんなこと今までで初めてだ。


「A。今年のクリスマスだが俺はショートケーキが良いのだが!」
「……えーチョコが良い」
「むう……それではここは公平にジャンケンにしよう!」


 さっきとは打って変わりまるで別人のように杏は笑顔を浮かべた。いつもと変わらない杏に戻っていた。切り替えの速さに驚きつつも心底安心した私は反論を繰り返した。


「杏は勝負強いから杏がジャンケンに勝つ」
「やってみないとわからない」
「千くんを味方につける」
「それは俺が勝てる訳ないだろう」
「千くんは私の味方」
「むう」


 結局のところいつだって私が勝つし何だかんだ毎年私が好きな味のケーキになる。杏はいつもそうだ。「A、今年は」と杏が話しかけた時に丁度踏切の警報が鳴った。踏切が上がり切り何かと訊けば「何でもない、さあ行こう」と私の手を杏は引いた。


「クリスマスは部活?」
「午前中は部活だが午後はない」
「わかった。千くんと午前中に準備してるね」
「ありがとう!」


 杏はさぞ嬉しいのか大きな瞳を細めて口角を上げる。杏は毎年、同じように繰り返す一日なはずなのに張り切って、楽しみだと何度も口にする。変な杏だな、と思いつつも杏と千くんと過ごすクリスマスが私も楽しみであるのには間違いない。


「杏。今年もトナカイやって」
「む。俺がトナカイならAは雪達磨だな!」
「私はサンタコス」
「破廉恥だ!けしからん!」
「クソ親父みたい、杏」
「むう!」


 「違う!」と凄まじい勢いの杏に私は今日一番の声で笑った。お日様が遠ざかる今日という日も心が温まるそんな瞬間を大事に大事に重ねてくれる杏には感謝してもしきれない。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 宇髄天元 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:恋愛
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三月の専属ストーカーなつめみく - れんごくさんがむせるとよもっ、って可愛すぎて一人で悶絶するわ (10月25日 16時) (レス) @page3 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ひよさん» ひよさん、またお会いできて本当に嬉しく思います、そしてコメントもありがとうございます(;_;)天元様と夢主のキラキラして輝く瞬間と2人の葛藤を書けていけたらな、と思っております。ゆっくりではありますがお付き合い頂けると嬉しいです!よろしくお願い致します! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 蓮さま、新作ありがとうございます!! 学校のアイドル、天元さまは似合いますね♡ 純な夢主ちゃんと天元さまの恋がどう進むのか楽しみです。更新はどうか、無理のないペースで!! (2022年4月29日 20時) (レス) @page7 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年4月24日 14時

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