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 頗る甘い声だ。鳥肌が立ってしまいそうなほど、甘えて宇髄くんを求めているような声に寒気がしてしまった。指先がどういうわけか震えてしまって止まらない。


「いいじゃん。少しだけ。ね?」
「……困りますよ」
「天元くん、上手いって聞いたよ」


 「何かは知らないけど」とクスクスと女の先輩は笑った。そして宇髄くんの大きな手に自分の指を絡ませた。歳が一つしか違わない筈なのに、あんなにも艶やかな先輩の仕草にこっちが恥ずかしくなった。


「……本当にやめて下さい」
「つまんなーい」


 宇髄くんは先輩の手を振り払った。一気に表情を曇らせた先輩に、「すみません」と律儀に宇髄くんは頭を下げた。それでも尚、先輩は何でよ、と幼稚園児のように駄々を捏ねている。
 正直なところ先輩には呆れてしまった。先輩としての威厳とか、プライドなんて言葉は彼女にはなくて、自分の欲望のままに宇髄くんを困らせていた。段々と腹が立ってきたが、何も出来ず動けない私は、机の下で蹲り身を隠すしかなかった。
 しかしそんな時だ。猛烈な刺激──くしゃみがしたくなってしまった。やめて、お願い、と必死に堪えたがその努力も無意味だった。爆裂したくしゃみ。一斉に私を見る二人。やってしまった。


「何あんた。盗み聞きとか最悪」
「……齋藤ちゃん」


 ────逃げるしかなかった。

 怪訝な表情の先輩は私を鋭く睨み付けた。宇髄くんの顔は見れなかった。一番怖い、と思ってしまったのは何故か宇髄くんだった。
 走って走って駅に着いて、椅子に座ってもドキドキと激しく律動を繰り返す心臓に掻き立てられてて落ち着かなかった。家に着いて私は一番に宇髄くんから貰ったぬいぐるみをリュックサックから取った。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 宇髄天元 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:恋愛
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三月の専属ストーカーなつめみく - れんごくさんがむせるとよもっ、って可愛すぎて一人で悶絶するわ (10月25日 16時) (レス) @page3 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ひよさん» ひよさん、またお会いできて本当に嬉しく思います、そしてコメントもありがとうございます(;_;)天元様と夢主のキラキラして輝く瞬間と2人の葛藤を書けていけたらな、と思っております。ゆっくりではありますがお付き合い頂けると嬉しいです!よろしくお願い致します! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 蓮さま、新作ありがとうございます!! 学校のアイドル、天元さまは似合いますね♡ 純な夢主ちゃんと天元さまの恋がどう進むのか楽しみです。更新はどうか、無理のないペースで!! (2022年4月29日 20時) (レス) @page7 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年4月24日 14時

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