視線 ページ10
あの手形のことを忘れようと、いつもより集中して部活に取り組んでいたら、いつの間にか部活終了時間になっていた。真冬の午後七時、もうとっくに日は暮れている。校舎内の電気がついていない所は真っ暗で、少し不気味だった。
こういう時に限って、ネットで見た学校の怖い話を思い出してしまうのはどうにかならないのか。急いで帰り支度を済ませ、校門の前で部活の仲間と別れた。悲しいことに、私だけ帰る方向が逆なのである。まあ、バス停や駅は全て私の家とは真逆の方向にあるので仕方ないが。
北海道や東北と比べれば雪が少なく気温が高いとはいえ、やはり冬の夜は寒い。マフラーに顔を埋め、手を上着のポケットに突っ込んで足早に歩く。ホッカイロでも持ってくれば良かった。そうしたらこの寒さも少しは緩和できたかもしれない。
月は出ておらず、街灯だけが照らす通学路には、私しかいなかった。それもそうだ。こんな寒い夜にわざわざ外に出ようなんて考える人はいないだろう。分かってはいるけれど、やはり心細い。こうも静かだと、つい余計なことを考えてしまう。あそこの電柱の影から誰かが覗いていたらどうしようとか、今この世界には私しかいないんじゃないか、とか。止めようと思っても思考は止められず、嫌な想像ばかりしてしまう。
それもこれも、全部あの夢のせいだ。あんな夢さえ見なければ、こんなことは考えなかったはずだ。あの手形だって、心霊現象だ、といつもの調子で喜べたはずだ。
あの夢を見た理由は何だろう。二日連続で同じ夢を見たんだ、それには何かしらの理由があるはずだ。根拠はないが、そう確信した。
今までの出来事を遡ろうとして、また余計なことを考えていることに気づいた。
考えるな。考えるな。頭の中で念じる。
──心当たりなんて一つしかないじゃないか。
考えるな。
──それ以外に何があるんだ。
考えるな。
──異変が起こり始めたのは、よもぎさんのことを調べてからじゃないか。
見つけた
「！！！」
ふいに、背後から強い視線を感じた。
立ち止まり、ぎこちなく振り返る。
けれど、そこには誰もいない。
「……気のせい、だよね」
声に出して自分に言い聞かせる。
変なことを考えすぎだ。
一度気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする。冷たい空気が肺に入ってくる。吐いた白い息を見て、何故か少し安堵した。
早く帰ろう。
止めた足を動かす。
歩く速度は次第に速くなり、家が見える頃には全力で走っていた。
逃さない
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絹ごし(プロフ) - みるくがーるさん» ご感想ありがとうございます！作品を楽しんでいただけたなら嬉しいです！ギミックですが、ドラッグと言えば伝わりますでしょうか？ギミックは作品の至る所にありますので、是非随所でドラッグをお試しください。 (2020年7月30日 15時) (
レス) id: 4bc34f0b9f (このIDを非表示/違反報告)
みるくがーる - ギミックとやらが分からないです…でも、お話は凄い怖くておもしろかったです！ (2020年7月30日 6時) (レス) id: e8907ac6ff (このIDを非表示/違反報告)
絹ごし(プロフ) - 斜陽さん» 感想ありがとうございます！作者側だと怖いかどうか分からないので、そう言っていただきとても嬉しいです！ギミックについてですが、一番最後のページに詳細を追加しましたので、お手数ですがそちらをご覧ください。応援も嬉しいです、ありがとうございます……！ (2020年7月29日 18時) (レス) id: 4bc34f0b9f (このIDを非表示/違反報告)
斜陽(プロフ) - コメ失礼します。前作「床下の古井戸」も見させて頂きました。正直とても怖くて夜に見るんじゃなかったと後悔しています…。ギミックで鳥肌立ちました。よければどうやるのか教えてくれると嬉しいです！長文失礼しました、これからも応援させて頂きます。 (2020年7月28日 21時) (レス) id: 45dbeb9083 (このIDを非表示/違反報告)
絹ごし(プロフ) - ずんだ猫。さん» ご感想ありがとうございます！ギミックはこの作品で一番こだわったところなので、楽しんでいただけたなら嬉しいです！作品を作る頻度は低いですが、自分のペースで頑張りたいと思います！ (2020年7月25日 23時) (レス) id: 4bc34f0b9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹ごし | 作成日時：2020年7月24日 17時
